今年度はiNOS誘導効果を有する可能性のあるサイトカインとしてIL-6に着目した。野生型マウスでの虚血再潅流傷害において、IL-6はday1に高発現し、day3にかけて徐々に低下しており、さらにIL-6の中和抗体を投与したマウスは組織傷害が軽減され、それは抗TNF-α抗体を投与したマウスと同程度であった。また抗IL-6抗体投与マウスの傷害皮膚においては、野生型マウスと比較しiNOSとTNF-αの発現が有意に低下していた。これらのことから、IL-6がTNF-αの上流にあり、IL-6を阻害することで抗TNF-α抗体よりも効果的に虚血再潅流傷害を軽減できることが示唆された。また抗IL-6抗体と抗TNF-α抗体、および抗IL-6抗体とiNOSの阻害剤である1400Wを組み合わせ、同時に投与してみたが、抗IL-6抗体単独投与時と同程度の傷害であった。この原因としては、本研究の虚血再潅流モデルでは虚血による組織傷害が必ず生じ、再潅流傷害のみを評価できないため、有意な差にならなかったものと考えた。 さらに投与経路について検討した。これまでに使用した抗IL-6抗体、抗TNF-α抗体、1400Wのいずれにおいても正常皮膚への皮下注射および皮内注射で異常は認められなかった。次に薬剤の貼付実験を試みたが、マウスの体毛および運動・掻破行為により正確な評価ができなかった。従って、皮膚への皮下注射・皮内注射の安全性が高いことは示唆されたが、理想的な塗布および貼付での投与は評価できなかった。 以上の結果から、虚血再潅流傷害においてIL-6はTNF-αの上流に位置し、IL-6を抑制することでTNF-α産生が抑制され、TNF-α自体による皮膚傷害とTNF-α産生に引き続いて生じるNO産生による皮膚傷害を同時に軽減するため、抗IL-6抗体は抗TNF-α抗体よりも虚血再潅流傷害をより軽減できることが示唆された。
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