研究課題/領域番号 |
24791143
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
松澤 高光 山梨大学, 医学部附属病院, 医員 (40568028)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 国内研究 |
研究概要 |
HIVは細胞侵入時にCD4と共に、CCR5を使うR5HIVと、CXCR4を使うX4HIVに大別される。多くの疫学的研究により、R5HIVのみが異性間接触時に宿主に感染できることが分かっている。 近年我々は、表皮水疱蓋を用いたex vivo HIV感染モデルを用い、性行為HIV感染におけるCCR5阻害薬;Maraviroc(シーエルセントリ:ファイザー製薬)の経皮的HIV感染阻害効果を検討し、同モデルにおける経皮HIV感染予防効果を確認している。さらに、Maraviroc(MVC)内服後のDiscordant couplesのAIDS男性から、同剤の精液への移行も確認している。 さらに当研究室では、MVC(300 mg x 2/day)を1日、2日、3日、あるいは14日間内服した健常ボランティア(各5名)から精液を採取し(最終内服2時間後)、MVC濃度を測定し、MVC内服後の精液中への移行を確認済みである。 以上の背景より、予防薬としてのMVC内服後の精液暴露も、異性間接触時のHIV感染阻害効果を増強しうる、と仮説を立て研究を進めている。 健常ボランティア(各1名)に、MVCを1日、2日、ないし3日間内服してもらい、内服後精液を採取した。また、同ボランティアより、MVCを内服しない時期に精液を採取した。次に、異なるボランティア(各1名)から表皮水疱蓋を採取し、その表皮シートにex vivoで、1、MVC内服後の精液とHIV(HIVBaL; R5 HIV)を2時間曝露する場合 2、MVCを内服していない精液とHIVを2時間曝露する場合 3、HIVのみ2時間曝露する場合に分け、1~3につき、フローサイトメトリーで表皮から遊走したランゲルハンス(LC)のHIV感染率を、ELISAでLCからCD4陽性T細胞へのHIV播種・伝播能を比較したが、有意差は認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
健常ボランティア(各1名)に、MVCを1日、2日、ないし3日間内服してもらい、内服後精液を採取した。また、同ボランティアより、MVCを内服しない時期に精液を採取した。次に、異なるボランティア(各1名)から表皮水疱蓋を採取し、その表皮シートにex vivoで、1、MVC内服後の精液とHIV(HIVBaL; R5 HIV)を2時間曝露する場合 2、MVCを内服していない精液とHIVを2時間曝露する場合 3、HIVのみ2時間曝露する場合に分け、1~3につき、フローサイトメトリーで表皮から遊走したランゲルハンス(LC)のHIV感染率を、ELISAでLCからCD4陽性T細胞へのHIV播種・伝播能を比較したが、有意差は認めなかった。 上記結果は、MVC内服3日間以内では、MVC内服後の精液暴露がHIV感染阻害効果を増強しうる、という仮説に合致しない。被験者数が少ない状況であり、またMVC14日間内服後の精液曝露に関しては、フローサイトメトリーで表皮から遊走したLCのHIV感染率、ELISAでLCからCD4陽性T細胞へのHIV播種・伝播能を比較できていない。 また、健常ボランティアと、精液や表皮シートの採取の日程の都合がつきにくかったことが、被験者数が少なかった一因である。
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今後の研究の推進方策 |
MVC内服後の精液暴露も、異性間接触時のHIV感染阻害効果を増強しうる、という仮説のもと研究を進めている。 今後、学内掲示板などを頻繁に活用し、被験者数を増やし、研究が遅れている平成24年度研究実地計画において、MVC(300 mg x 2/day)を1日、2日、3日、あるいは14日間内服する被験者数を各々3-4人にし、各群において、LCのHIV感染率、LCからCD4陽性T細胞へのHIV播種・伝播能を比較検討する。 また、平成25年度の研究実地計画としている、MVCを内服した健常ボランティアから採取した表皮シートを用いる同様の研究についても行っていく予定である。平成25年度の研究実地計画におけるMVC内服期間であるが、3日間以上MVCを内服した健常ボランティアから採取した表皮シートでは、フローサイトメトリーで表皮から遊走したLCのHIV感染率、ELISAで表皮から遊走したLCからCD4陽性T細胞へのHIV播種・伝播能ともに完全に抑制されることが、当研究室の前実験にて確認されている。そのため、MVC内服内服期間は1日ないし2日間とする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、研究が遅れており、FACSに使用する抗体、LCを培養するためのプレートや培養液、FACSやELISAを行う際に使用するTipやCentrifuge Tubeなどの消耗品の購入数が減った。このため、未使用金が生じた。 次年度は、研究が遅れている平成24年度研究実地計画において、MVC(300 mg x 2/day)を1日、2日、3日、あるいは14日間内服する被験者数を各々3-4人にし、各群において、LCのHIV感染率、LCからCD4陽性T細胞へのHIV播種・伝播能を比較検討する。また、平成25年度の研究実地計画としている、MVCを内服した健常ボランティアから採取した表皮シートを用いる同様の研究についても行っていく予定である。 ボランティアから精液、表皮シートを提供していただくにあたり、1人あたり約6-8万円の報酬が必要である。FACSを頻繁に行うために、各種モノクローナル抗体が消耗品として多量に必要である。特に頻用するものとして、LCを同定するためのLangerin/HLA-DR/CD1a/CD11cなどがある。これらの抗体はLCをソーティングする際にも用いられる。また、HIV感染LCを同定するためにintracellular stainingキット、またHIV p24に対するモノクローナル抗体を頻用する。HIVp24のELISAを頻繁に行うために、 HIVp24ELISAキットが消耗品として多量に必要である。本研究はHIVウイルスが不可欠であり、購入費用がかかる。LCを培養するためのプレートや培養液、FACSやELISAを行う際に使用するTipやCentrifuge Tubeなどの消耗品も不可欠であり、購入費用がかかる。
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