研究課題/領域番号 |
24791144
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
青木 類 山梨大学, 医学部附属病院, 助教 (10377541)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | マスト細胞 / 単純ヘルペスウイルス / 自然免疫 |
研究概要 |
近年、自然免疫の誘導や調節におけるマスト細胞の重要性が明らかにされてきている。細菌感染においてはマスト細胞由来の様々な生理活性物質が細菌の排除に寄与していることが報告されているが、ウイルス感染におけるマスト細胞の生体防御への関与については明らかにされていない。我々は、人体にとって重要な病原体であるHerpes simplex virus(HSV)感染におけるマスト細胞の役割を解明することを目的として研究を行い、HSV皮膚感染モデルを用いて、マスト細胞欠損マウス(W/Wv)ではコントロールマウス(+/+)と比較し、皮疹や麻痺が重症化し、生存率が有意に低くなることを見いだした。 そこで、生体防御に関わるマスト細胞由来因子の検索にあたり、抗 HSV作用の報告のあるTNF-αとIL-6に注目した。W/Wvの背部皮膚に、+/+, TNF-α KO, IL-6 KOマウス由来の骨髄由来マスト細胞(BMMC)を再構成した後、同部位にHSV2を皮内接種し、再構成によるHSV感受性回復の有無につき検討した。W/Wvの生存率は、+/+由来BMMC再構成により完全に回復したが、TNF-α KO, IL-6 KOマウス由来BMMCの再構成では完全には回復しなかった。以上よりマスト細胞由来TNF-α, IL-6が生体防御に重要であることが示唆された。また、in vitroでBMMCは、HSVの直接刺激ではサイトカインを産生しないが、HSV感染させたケラチノサイトPam212の上清に反応してTNF-αとIL-6を産生した。 次に、HSV感染Pamの上清中のマスト細胞活性化因子について検討したところ、IL-33のレセプターST2のブロックにより、BMMCから産生されるサイトカインは完全に抑制され、HSV感染Pamから放出されるIL-33がマスト細胞のサイトカイン産生刺激となっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HSV感染において、生体防御に関わるマスト細胞由来因子につき、HSV皮膚感染モデルを用いてin vivoで証明できた。また、in vitroでマスト細胞にHSVを曝露した際のサイトカイン産生、脱顆粒について検討し、直接刺激には反応しなかったが、ケラチノサイトを介した間接的刺激によりサイトカイン産生がみられることを示すことができた。さらに、ケラチノサイト由来のマスト細胞を活性化する因子について中和抗体を用いたブロッキング実験により、IL-33であることが示唆されたが、まだ確証が得られておらず、今後のさらなる検討を要する状態である。
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今後の研究の推進方策 |
マスト細胞のサイトカイン産生を誘導するケラチノサイト由来因子について、さらに検討する。 HSV感染Pam212の上清中のサイ トカインにつき、マスト細胞の炎症性サイトカイン産生を誘導する因子として報告されている、TNF-α, IL-1, IL-33, TSLP等ELISAにて測定し、中和抗体添加によりBMMCのサイトカイン産生が抑制されるかどうかを解析する。 さらに、生体防御におけるIL-33/ST2の重要性をin vivoでも証明するため、ST2 KOマウス由来BMMCを作成し、W/Wvマウスの皮膚局所にST2 KO BMMCの再構成を行い、同部位にHSV2を接種し、生存率が回復するかどうかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
HSV感染ケラチノサイト由来のマスト細胞を活性化する因子の検索のために使用した中和抗体の種類が予定より少なかったため、未使用金が生じた。 この未使用金を含め次年度の研究費は、すべて中和抗体等、消耗品類の購入に使用する予定である。
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