褥瘡を始めとする皮膚虚血再潅流障害において、HMGB1が創傷治癒に及ぼす効果を検討した。そこで本課題では、実験的にマウスに褥瘡を作成し、HMGB1の作用を検討した。我々は、すでに2つの円筒形マグネットによりマウスの背部を挟むことにより、褥瘡モデルを安定して作成することに成功している。 免疫染色により、虚血再灌流部では表皮においてHMGB1が細胞質に発現していることを示した。また、虚血再灌流後では、血清中のHMGB1濃度が上昇することが分かった。 従って、褥瘡部ではHMGB1が発現していることが分かった。 虚血再灌流部には炎症が起こり、炎症細胞が浸潤する。この炎症細胞の数は、抗HMGB1抗体を注射したマウスでは減少している、つまり、炎症が抗HMGB1抗体により抑えられたといえる。これらの結果は抗HMGB1抗体が虚血再潅流障害において、過剰な炎症を抑えることで、潰瘍の治癒を促進していることを示唆している。今後、HMGB1をターゲットとした薬剤の開発のための基礎的なデータとして有用であると考えられる。
|