研究課題/領域番号 |
24791152
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
谷崎 英昭 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90586653)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 尋常性乾癬 / 血清アミロイドA / 樹状細胞 |
研究概要 |
尋常性乾癬患者と健康人を対象とし、計35例の患者と健康者の血清アミロイドA(Serum Amyloid A; SAA)を測定し、両者の差異について検討を行った。また、同時に病変の主座である皮膚より組織切片を採取してSAAが前駆物質としてしられるアミロイドAについて免疫染色を行い、健常コントロールと乾癬患者の組織間でSAAの沈着に差がないかを検証おこなった。その結果、乾癬患者病変部においてSAAの高発現を認め、乾癬患者において血清SAA濃度は優位に上昇し、治療後には有意に低下することが明らかとなった。また、乾癬皮疹部表皮において皮膚局所でのアミロイドAの沈着を認めた。以上より、非特異的な炎症の指標の1つとされるSAAが、尋常性乾癬病変部において病態の形成・遷延に何らかの役割を果たしている可能性が示唆された。 続いて、in vitroにおいてヒトMonocyte derived Dendritic Cellを作成してSAAの皮膚樹状細胞に対するサイトカイン産生能やIL-6やIL-23を介したIL-17産生T細胞の分化誘導能などについても解明を行った。その結果、SAA濃度依存性にヒトMonocyte derived Dendritic Cellから尋常性乾癬の病態に関与するとされるIL-6, 23 TNFαの産生が増加する結果を得、ナイーブT細胞からTh17産生T細胞への分化比率についても同様の結果を得た。 最後に、SAA投与によりマウス乾癬様の皮疹を誘導しうるか検討を行った。SAAを背部皮下に投与して5日目から7日目にかけて表皮肥厚、炎症細胞浸潤が顕著となった。生物学的製剤として尋常性乾癬の一つの標的分子となっているIL-12/23p40蛋白をあらかじめ投与することによってそれらは有意に抑制され、ヒトのおける尋常性乾癬に類似した状態が再現できているものと考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
尋常性乾癬患者と健康人を対象とした計6例のmicroarray実施して乾癬患者病変部におけるヒト検体を用いた免疫染色にてSAAの尋常性乾癬形成における重要性を確認した。 更に、ヒト末梢血より採取・培養した樹状細胞におけるSAA添加時の活性化能、サイトカイン産生能の評価し、最後にSAA投与による乾癬様皮疹を呈する新規マウスモデルを確立することができ、免疫学的反応においても尋常性乾癬類似の反応が形成できたものと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
上記の結果を基に、乾癬様皮疹形成の経時的変化(特に形成初期)にSAAが関与するかどうかなどについてマウスもでるにて検討を重ね、更には尋常性乾癬の患者検体おいても、発症時期や部位、血液データなどを総合的に判断して網羅的に検討を行っていきたいと考えている。SAAが尋常性乾癬の治療ターゲット分子となり得るかどうかについては、特に重要課題と考えて取り組んでいく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
試薬・マウスの物品費を中心に、2年間にわたる研究成果の報告を研究皮膚科学会や日本免疫学会などを中心に報告する予定である。
|