研究概要 |
尋常性乾癬患者と健康人を対象とし、計35例の患者と健康者の血清アミロイドA(Serum Amyloid A; SAA)を測定し、両者の差異について検討を行った。また、同時に病変の主座である皮膚より組織切片を採取してSAAが前駆物質としてしられるアミロイドAについて免 疫染色を行い、健常コントロールと乾癬患者の組織間でSAAの沈着に差がないかを検証おこなった。その結果、乾癬患者病変部においてSAAの高発現を認め、乾癬患者において血清SAA濃度は優位に上昇し、治療後には有意に低下することが明らかとなった。また、乾癬皮疹部表皮において皮膚局所でのAAアミロイドの沈着を認めた。以上より、非特異的な炎症の指標の1つとされるSAAが、尋常性乾癬病変部において病態の形成・遷延に何らかの役割を果たしている可能性が示唆された。続いて、in vitroにおいてヒトma末梢血よりMonocyte derived Dendritic Cellを作成してSAAの皮膚樹状細胞に対するサイトカイン産生能やIL-6やIL-23を介したIL-17産生T細胞の分化誘導能などについても解明を行った。その結果、SAA濃度依存性にヒトMonocyte derived Dendritic Cellから尋常性乾癬の病態に関与するとされるIL-6, 23 TNFαの産生が増加する結果を得、ナイーブT細胞からTh17産生T細胞への分化比率についても同様の結果を得た。 最後に、SAA投与によりマウス乾癬様の皮疹を誘導しうるか検討を行った。SAAを背部皮下に投与して5日目から7日目にかけて表皮肥厚、炎症細胞浸潤が顕著となった。生物学的製剤として尋常性乾癬の一つの標的分子となっているIL-12/23p40蛋白をあらかじめ投与 することによってそれらは有意に抑制され、ヒトのおける尋常性乾癬に類似した状態が再現できているものと考えられた。
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