研究概要 |
セリンプロテアーゼの異常活性はアトピー性皮膚炎(AD)の病態に重要な役割を果たしていることが明らかになっている。我々はこれまでの研究でTh2サイトカインであるIL-4とIL-13が表皮角化細胞においてカリクレイン7の発現と機能を増強すること,さらにTNF-aとIL-17Aがセリンプロテアーゼ阻害因子LEKTIの発現を有意に増強させることを見出した。今回我々はその他のセリンプロテアーゼ阻害因子である分泌型白血球ペプチダーゼ阻害因子(SLPI),エラフィンの発現制御因子についても検討した。LEKTIと同様にこれらのセリンプロテアーゼ阻害因子の発現はTNF-aとIL-17Aのよって有意に増強されることが明らかになった。 また,慢性皮膚炎症性疾患であるADと乾癬病変部におけるLEKTIの発現について免疫組織学的に検討したところ,興味深いことにLEKTIの発現は乾癬病変部で著明に増強している一方で、AD病変部では正常皮膚と同レベル程度しか認めなかった。TNF-aとIL-17Aは乾癬病変部で高発現しているため,慢性皮膚炎症性疾患であるADと乾癬病変部におけるLEKTIの発現の差に関与している可能性がある。 さらに我々はハプテン繰り返し投与のTh2依存性皮膚炎マウスモデル(ADモデル)においてセリンプロテアーゼ阻害剤が与える影響について検証した。1%TNCB溶液にて感作後, 同液を12日おきに同側の耳に12回塗布し,その後1日2回ベンズアミジン,4-(2-Aminoethyl) benzenesulfonyl fluoride hydrochloride (AEBSF),ロイペプチン,Phenylmethylsulfonyl fluoride(PMSF)を外用塗布した。0、24、48、96時間後に耳介の厚さを測定したがコントロール群と比較して有意な差はみられなかった。
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