慢性蕁麻疹の病態において外因系の血液凝固能が亢進しているか否かを確認するため、トロンビン生成試験を行った。慢性蕁麻疹患者の血漿では健常人にくらべ、Tissue Factor(TF)、Phosphatidyl serine (PS)の添加によって産生されるトロンビン量が著しく増加していることが明らかとなった。この結果は、慢性蕁麻疹の病態では、外因系の血液凝固能が明らかに亢進していることを意味している。我々はTissue Factorの発現細胞の候補として、血管内皮細胞に着目した。血管内皮細胞におけるTissue Factorの発現メカニズムについてはこれまでよく知られていないため検討を行った。その結果、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(Huvec)では、ヒスタミン、Lipopolysaccharideによる刺激によってTissue Factorの発現が認められること、さらに、ヒスタミン、Lipopolysaccharide両者による同時刺激によって相乗的にTissue Factorの発現が起こることを見出した。さらに、ヒスタミンによるTissue Factorの発現は、ヒスタミンH1受容体拮抗薬での処理によって抑制されることがわかった。一方で、ヒスタミンH2受容体遮断薬では抑制されないことも示された。これらのことから、ヒスタミンH1受容体を介した反応であることが明らかとなった。次に、Lipopolysaccharideによる刺激後の血管内皮細胞におけるヒスタミン受容体のmRNAを検討した。その結果、刺激によりヒスタミン受容体の発現が亢進することがわかった。このことから、Lipopolysaccharideは血管内皮細胞のヒスタミンに対する感受性を増強させる可能性が示唆された。
|