研究課題/領域番号 |
24791161
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
志賀 建夫 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (70444768)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | TNF阻害薬 / Th17 / T細胞 |
研究概要 |
まず健常人の血液を用いてTh17分化誘導について検討を開始した。定量的RT-PCR法ではIL-17A,IFN-γの発現について若干の差異は認められたが,フローサイトメトリーによる検討ではIL-17AとIFN-γの両者が陽性の細胞はごくわずかであり,十分な検討を行うことができない可能性が示唆された。しかしながら,研究を進める中で,われわれはTNF阻害薬がCD3陽性のT細胞に直接的に作用している可能性を示唆する,新たなデータを得ることができた。健常人から採取,分離したCD3陽性細胞をTh17分化誘導条件で培養すると培養上清中でのIL-17A濃度が上昇するのみならず,TNF-αの濃度も上昇していた。そこでこれらの細胞をフローサイトメトリーを用いて解析したところIL-17とTNF-αの両者に陽性を示す,ダブルポジティブの細胞群が分化誘導されていることが確認できた。更には,このTh17分化誘導条件で生じるIL-17Aの産生がTNF阻害薬によって抑制されることも確かめることができた。これまでのところTNF阻害薬が乾癬に奏効する機序は十分に解明されていない。主にTip-DC(TNF and iNOS producing dendritic cell)に作用する可能性が示されてはいるものの,T細胞への直接的な作用は検討されていない。本研究の目的は,今後普及するであろう生物学的製剤(TNF阻害薬や抗p40抗体など)などの新しい治療選択を行うための理論的根拠を提供することであり,現在,TNF阻害薬のT細胞に対する直接的な作用について検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常人から末梢血単核球を採取し,CD3陽性細胞のみを分離,種々の条件で培養することによって検討を重ねている。健常人から採取したCD3陽性細胞をIL-1βおよびIL-23を添加した培地で培養すると(Th17誘導条件),IL-17Aの遺伝子発現が増強するが,ここにTNF阻害薬であるエタネルセプトを添加すると,IL-17Aの遺伝子発現が抑制された。この結果はTNF阻害薬がT細胞に作用することによってIL-17を抑制しうることを示している。さらにCD3陽性細胞をTh17誘導条件で培養すると,上清中のIL-17およびTNF-αの濃度が上昇するが,ここにエタネルセプトを添加するとIL-17の濃度が低下することを確認している。またフローサイトメトリーによる検討では,Th17誘導条件で培養したCD3陽性細胞のうちIL-17陽性の細胞は,TNF-αも同時に陽性であることを確認しており,エタネルセプトはIL-17陽性細胞の比率を低下させる傾向がみられている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた結果から,TNF阻害薬がT細胞に直接作用しIL-17の産生を抑制しうると考えられる。本研究の一部は既に2012年9月に行われた日本乾癬学会学術大会にて発表しているが,ELISAおよびフローサイトメトリーの結果をあわせたものを2013年5月に行われるInternational Investigative Dermatologyで発表する予定にしている(既に採択決定済み)。学会で得られた知見をもとに,さらに理論的根拠を追加し論文を投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に研究用試薬などの購入に充てる。また本研究で得られた成果を5月に海外学会で報告予定であり,その旅費に使用する。また論文投稿にかかる費用にも使用する。
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