本研究を進めていく中で,TNF阻害薬がT細胞に直接作用することでTh17への誘導が抑制される可能性が考えられた。そこで健常人より末梢血を採取し,T細胞のみを分離して検討を継続した。結果フローサイトメトリーおよびELISA法による検討で,分離したT細胞はIL-1βとIL-23の刺激によってIL-17AのみならずTNF-αも産生することが判明した。またその際,T細胞の表面にはTNF受容体IIが発現することも確認した。以上のことから,T細胞はTh17誘導条件において自身が産生したTNF-αの刺激によってよりIL-17Aを産生する,つまりTh17への分化が誘導される可能性が考えられた。事実,この条件にTNF阻害薬やTNF受容体IIに対する抗体を添加し,シグナルを遮断するとIL-17Aの産生が阻害された。これまで主にTNF阻害薬は病変部に浸潤するTNF and iNOS producing dendritic cells (Tip-DC)によって産生されている可能性が示されてきたが,病変部に稠密に浸潤しているT細胞そのものに対してTNF阻害薬が抑制作用を有している可能性が示唆された。また乾癬患者と健常人における差異について,乾癬患者からも末梢血からT細胞を分離し,Th17誘導を行うとともに,TNF阻害薬の作用を検討した。結果,ELISA法による検討でIL-17AはT17誘導条件でその産生が増強し,TNF阻害薬はその増強作用を抑制することが判明した。しかしながらフローサイトメトリーではやや異なる傾向がみられた。これは乾癬患者においては少なからず末梢血T細胞がTh17へと分化しやすい,あるいは既に分化していることに起因している可能性があるが,今後の更なる検討が必要と考えている。
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