今回我々はマウス真皮におけるメラノサイトの遊走と分化解析を行うため、C57BL/6野生型マウス(WT)及びC57BL/6nu/nuマウス(nu/nu)を用いてそれらの真皮におけるメラノサイトの分化と遊走について研究を行った。まず各マウスのメラノサイトを免疫染色にて検討したところ、WTでは日齢6-9までは真皮にメラノサイトが存在していたが、それ以降では消失していた。一方nu/nuにおいては、真皮内メラノサイトは漸減していくが、日齢30日の段階でまだ存在していた。次にこのメラノサイトの分化を調べるため、免疫染色を行ったところ、WT、nu/nuいずれにおいてもメラノブラスト(分化段階のメラノサイト)は日齢6以降では真皮内から消失していた。一方成熟メラノサイトはWTにおいては真皮内に存在しなかったが、nu/nuにおいては徐々に数を増加させ、その後日齢9をピークとして漸減していった。更にこれらのメラノサイトの挙動を確認するため、GFP導入マウスを作成し、皮膚の移植を行ったところ、メラノサイト(メラノブラスト)の遊走が認められた。次に日齢0のWT、nu/nu、日齢6のWT、nu/nuよりそれぞれメラノサイト(メラノブラスト)を採取、培養し、それらのメラノサイトの性質を免疫染色およびreal-time PCRを用いて解析した。結果、日齢0のマウスから採取したメラノサイトに関してはいずれも多くはメラノブラストであったが、日齢6のマウスから採取したメラノサイトについては、WTではメラノブラストが主であったが、nu/nuでは成熟したものが主であることがわかった。このことより、nu/nuにおいては、毛に移行することができなかったメラノブラスト(未熟なメラノサイト)が真皮で成熟し、アポトーシスを起こしていることが裏付けられた。
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