研究課題
中條-西村症候群は遺伝性プロテアソーム機能不全症として位置づけられる疾患であるが、病態の解明、有効な治療はまだ見出されていない。申請者は本疾患患者の主治医であり、患者検体を用いた研究を中心に行った。中條‐西村症候群患者の末梢血からlymphoprepによりPBMCを採取し、サイトスピン標本を免疫染色し、ユビキチンが細胞内に蓄積していることを確認した。MHC classI、IIの発現について、PBMCの細胞内、細胞外蛍光染色したものをFACSで確認したところ、MHC classIの発現は正常であったが、classIIの細胞外発現はみられなかった。患者の不死化B細胞でも同様の結果であった。PBMCにおいてHLA-DRの細胞内染色を行い、サイトスピン標本で観察すると、細胞内では発現がみられた。細胞表面へのMHC classIIの輸送障害がclassIIの発現に影響している可能性を考え、サイトスピン標本でearly endosome 、phagolysosome、Golgi体を免疫染色した。HLA-DRは主に細胞膜近傍に観察され、いずれの器官にも蓄積はみられなかった。細胞内外を染色する数種類の異なるepitopeに対する抗体を用いて染色すると、抗体によりHLA-DRの染色に差がみられた。以上の結果より、HLA-DRの構造異常が存在する可能性があり、PSMB8遺伝子変異に伴うヒッチハイク変異の存在が示唆された。中條-西村症候群の患者において、HLA-DRの異常は自己抗体陽性の原因の一つとなり得るため、HLA-DRの発現異常の検索は本疾患の病態解明に寄与するものと考えられる。PSMB8 cDNAを組み込んだ発現ベクターを患者の不死化B細胞にelectroporationで導入し、遺伝子導入を行った不死化B細胞にHLA-DRの発現がみられるか確認したが、発現はみられなかった。
3: やや遅れている
患者検体を用いた病態解明については、実験をすすめているが、MHC classIIの発現異常が研究の中心となったため、酵素補充療法についてはまだすすんでいない。中條-西村症候群では特徴的な頬のやせた顔貌と節くれだった指、四肢を中心とした限局性脂肪委縮がみられているので、患者血清中のレプチン、アディポネクチンなどの脂肪細胞成熟マーカーの検討を予定していたが、まだ行えていない。患者血清の採取・保存は行っているため、検体が集まれば、測定を開始する予定である。
1.中條-西村症候群患者検体を採取・保存し、レプチン、アディポネクチンなどの脂肪細胞成熟マーカーの測定・検討を行う。可能であれば、病勢増悪期、寛解期で差がないか検討したい。2.ヒトとマウスの正常免疫プロテアソームβ5iサブユニット蛋白質の生成に着手する。3.中條-西村症候群の患者末梢血や皮膚組織で見られた異常な表現型が変異PSMB8遺伝子ノックインマウスでもみられるか、検討する。4.市販されているヒト20Sプロテアソームを変異PSMB8ノックインマウスに投与し、異常な表現型が回復できるか検討する。ついで、生成されたヒトとマウスの免疫プロテアソームβ5iサブユニット蛋白質の投与により、HLA-DRの染色異常などの、患者由来細胞やノックインマウスで認められた異常な表現型を回復できるか検討する。
・消耗品 1) 各種抗体 400,000円 2) 遺伝子関連試薬・器具 400,000円 3) 染色関連試薬・器具 400,000円・学会関連費 1) 学会参加費 100,000円 2) 国内・海外学会参加旅費 200,000円 3) 年会費(間接費)・成果報告にかかわる費用 1) 論文校正、投稿費、別刷り代 100,000円合計 1,600,000円
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)
Dermatology
巻: 未定 ページ: 未定
pending