研究課題
表皮角化細胞における脱核は皮膚バリア獲得に重要であり、そのメカニズム解明は、アトピー性皮膚炎をはじめとした、不全角化を示す炎症性皮膚疾患において、新たな治療法への手がかりに繋がるものと期待し、本研究を進めてきた。脱核のプロセスには複数の経路が関与するのではないかとの仮説のもと、前年度までに、①カスパーゼ‐14のICAD/CADを介した経路、②プロフィラグリンN末端を介した経路の検討を行った。その結果、カスパーゼ‐14がICADを限定分解し、遊離したCADが核内に移行しDNA分解に働くこと、また、プロフィラグリンN末端のプロセシングにメソトリプシンが作用することを明らかにした。さらに、①と②の両経路の相互作用についても皮膚モデルを用いて検討し、カスパーゼ‐14およびメソトリプシンの各々の発現を抑制すると不全角化を認めること、さらに、ダブルノックダウンでは残存核が顕著になることを確認した。これらの結果を踏まえ、本年度は、アトピー性皮膚炎および乾癬などの不全角化を示す疾患におけるカスパーゼ‐14、メソトリプシンの発現状況を免疫染色にて検証した。その結果、不全角化部位に一致して、カスパーゼ‐14もメソトリプシンも顕著な発現低下を認めた。さらに、炎症性疾患では、表皮においてS100A8/A9の異常な発現亢進が認められる。S100A8/A9はTNFαなどの炎症性サイトカインの発現を誘導し、かつ、これらのサイトカインによりS100A8/A9の発現が亢進することが明らかになっている。また、TNFαはフィラグリンやカスパーゼ‐14の発現を抑制することが報告されていることから、これらのS100蛋白は炎症の慢性化に寄与しているのではないかと考えた。そのため、in vivoにおける検証を目的とし、S100A8、S100A9が表皮特異的に過剰発現するトランスジェニックマウスを作製した。これらを用いて、さらに関連する因子の動態解析を進めている。
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