研究課題/領域番号 |
24791182
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
宮田 麻衣子 中部大学, 生命健康科学部, 助手 (90397456)
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キーワード | メラノサイト / メラノーマ / ST8SIA1 / ケラチノサイト / UV-B / TNFα |
研究概要 |
H25年度は次の実績が得られた。 1) UVBを照射したケラチノサイト(HaCaT細胞)の培養上清でメラノサイトを培養し、GD3合成酵素、GM2/GD2合成酵素、GM1/GD1b合成酵素遺伝子の発現変化を解析した。新鮮な細胞培養液およびUVB未照射HaCaT細胞の培養上清で培養した時と比較し、GD3合成酵素およびGM2/GD2合成酵素遺伝子の発現は上昇し、GM1/GD1b合成酵素遺伝子の発現は減少した。これらの糖鎖合成酵素遺伝子の発現パターンは、メラノーマ細胞のものと類似していた。 2) UVBを照射したケラチノサイト(HaCaT細胞)により培養上清中に分泌される炎症性サイトカインを解析した。その結果、UVB照射によりTNFα、IL-6、IL-1β、IL-8の産生が誘導された。 3) メラノサイトをTNFα、IL-6、IL-1β、IL-8をそれぞれ含む細胞培養液で培養し、GD3合成酵素、GM2/GD2合成酵素、GM1/GD1b合成酵素遺伝子の発現変化を解析した。その結果、GD3合成酵素遺伝子の発現がTNFαおよびIL-6により誘導され、IL-1βによってもわずかな亢進が認められた。GM2/GD2合成酵素およびGM1/GD1b合成酵素遺伝子の発現は、いずれのサイトカイン処理によっても変化が認められなかった。メラノーマをTNFα、IL-6にて処理した結果、これらの糖鎖合成酵素遺伝子の発現に変化が認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) メラノーマ細胞と培養メラノサイトにおいて、定常状態における糖転移酵素遺伝子の発現の差異を検出できた。2) メラノサイトに直接UVBを照射した場合、糖鎖合成酵素遺伝子(GD3合成酵素、GM2/GD2合成酵素およびGM1/GD1b合成酵素遺伝子)の発現レベルに著明な変化が起こらないことを示した。3) UVB照射により、ケラチノサイト(HaCaT細胞)において炎症性サイトカインTNFα、IL-6、IL-1β、IL-8の産生が誘導され、この培養上清で培養することにより、メラノサイトにおける糖鎖合成酵素遺伝子(GD3合成酵素、GM2/GD2合成酵素およびGM1/GD1b合成酵素遺伝子)の発現が変化することを初めて明らかにした。また、それぞれの炎症性サイトカインを含む細胞培養液でメラノサイトを培養することにより、TNFαおよびIL-6がGD3合成酵素遺伝子の発現誘導に関与することを示した。4) 脂質ラフト組成の質量分析(MS)解析のために、LESA(Liquid Extraction Surface Analysis)を利用したTLC-MSによる糖脂質分析法を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
H24~25年度の研究成果をもとに、 1) UVBを照射したケラチノサイト(HaCaT細胞)により培養上清に分泌される因子について、今回測定した炎症性サイトカイン以外のサイトカイン、ケモカイン、成長因子等をRT-PCR、Cytometric Bead Array、MSにより解析し、GM2/GD2合成酵素およびGM1/GD1b合成酵素遺伝子の発現制御に関与する因子を検討する。2) メラノサイトをTNFαおよびIL-6で処理した場合のGD3合成酵素遺伝子の発現誘導に関与する因子を解析する。特に、NF-kBによる発現制御の有無をNF-kB阻害剤の効果を解析することにより明らかにする。3) メラノサイトをUVB照射HaCaT細胞の培養上清で培養した場合のGM1/GD1b合成酵素遺伝子の発現抑制におけるエピジェネティックな制御機構について、DNAのメチル化およびヒストン修飾における変化を解析する。4) メラノーマおよびメラノサイトにおいて細胞から抽出した糖脂質および脂質のMS分析を行い、メラノーマ、メラノサイトの脂質構成の差異を明らかにする。5) ヒトメラノーマ組織または正常組織(良性の母斑など)において糖脂質合成酵素遺伝子群の発現解析を行い、細胞レベルで得られた結果を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度の実験が順調に進展し、消耗品の購入額(消耗品費)および研究補助費(謝金等)が予定よりも少額で済んだ。 H25年度の残金は次年度の研究を遂行するために使用する。特に、サイトカインによる糖鎖合成酵素遺伝子の発現制御機構についての解析を発展させる目的で、実験機器、消耗品に使用予定である。また、H26年度の研究費は主に物品費として使用するが、研究の進行状況に応じて実験補助のために人件費として支出する可能性がある。
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