研究課題/領域番号 |
24791193
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉崎 嘉一 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50393161)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 血管性うつ病 / 脳血管障害 / ストレス脆弱性 |
研究概要 |
高齢者のうつ病患者において、臨床症状あるいはMRI等の脳画像診断に基づいて『血管性うつ病仮説』が提唱されている。これまでの研究から、実験動物(マウス)を用いて、脳血管障害がストレス脆弱性を引き起こすことにより、うつ病の病態に貢献することを明らかにしてきた。本年度は、1. 脳血管障害によるストレス脆弱性の極大期を同定するために、野生型マウス(C57BL6/J, オス, 12週齢)に偽手術もしくは左総頸動脈永久結紮手術(以下、結紮手術)を施し、①直後から2週間まで(急性期)、あるいは②結紮手術2週間後から4週間まで(慢性期)にストレスホルモンの1つであるグルココルチコイド(5mg/kg/day in 0.45% EtOH in tap water)を飲水投与し、それ以外の期間には溶媒(0.45% EtOH in tap water)を飲水投与し、結紮手術から4週間後にうつ病様・不安様の行動解析を行った。現時点では予備的なデータではあるが、結紮手術後の慢性期における2週間のストレス負荷は、結紮手術直後からの4週間のストレス負荷と同定のうつ病様異常行動を認めた。一方で、結紮手術後の急性期における2週間のストレス負荷では、うつ病様異常行動を認めなかった。今後、急性期のストレス負荷後のストレス除去の影響について検討する必要が指摘された。2. ストレス脆弱性を惹起する脳血管障害の閾値を同定するために、工業用微小コイルを用いてマウスの総頸動脈を狭窄する技術を応用し、片側総頸動脈永久狭窄手術(以下、狭窄手術)の習得を目指した。野生型マウス(C57BL6/J, オス, 12週齢)に狭窄手術(内径0.20または0.16mm)を施し、1週間の生存率により手術の正否を評価した。その結果、いずれの狭窄手術後もすべてのマウスの生存が確認された(各群n=3)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、大別して3つの実験計画を立案した。【実験1】脳血管障害によるストレス脆弱性の極大期と炎症との関連性について。本年度中に、脳血管障害によるストレス脆弱性の極大期を同定する予定であり、予備的なデータではあるものの、脳血管障害を導入後の2週間から4週間におけるストレス負荷は、脳血管障害を導入後から4週間のストレス負荷と同程度のうつ病様異常行動を引き起こすことを明らかにした。一方で、さらに必要数の動物を用意し追加実験する必要がある。【実験2】ストレス脆弱性を惹起する脳血管障害の閾値と炎症との関連性について。本年度中に、先行研究に基づいて、マウスに対する片側総頸動脈永久狭窄手術の技術習得を目指す予定であり、工業用コイルを入手して、マウスに対する生存率による評価ではあるものの、片側総頸動脈永久狭窄手術を技術習得した。【実験3】脳血管障害によるストレス脆弱性の成因としての『炎症』の関与について。本実験は、本年度中に抗炎症剤による薬理実験を開始予定していたが、未だに開始できていない状況である。上記したように、すべての実験計画が計画通りに遂行された訳ではないが、全体と通じて、おおむね順調に進展していると考えいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験結果をもとに、それぞれの実験計画に対して今後の研究の推進方法を再考する必要がある。【実験1】脳血管障害によるストレス脆弱性の極大期と炎症との関連性について。本年度中には、すべての実験を終了させることが出来なかった。今後はさらに必要数の動物を用意し実験を進める。また、急性期のストレス負荷実験において、ストレス除去期間にうつ病様異常行動が減弱している可能性を排除する必要性が考えられたために、追加項目として、結紮手術直後から2週間ストレスホルモンを飲水投与し、行動解析を行う実験を行う。【実験2】ストレス脆弱性を惹起する脳血管障害の閾値と炎症との関連性について。本年度に予定していた狭窄手術を技術習得することが出来たため、今後は予定通り、狭窄手術を施したマウスに対してストレス負荷を行い、ストレス脆弱性を惹起する脳血管障害の閾値を明らかにする予定である。【実験3】脳血管障害によるストレス脆弱性の成因としての『炎症』の関与について。本年度中に抗炎症剤による薬理実験を開始予定していたが、未だに開始できていない状況である。今後は、早急に薬理実験を開始し、脳血管障害によるストレス脆弱性の成因としての『炎症』の関与を明らかにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
前述したように、全体としてはおおむね順調に進展していると考えいるが、【実験2】の狭窄手術に必要な工業用コイルは前年度にまとめ買いをしたので、本年度改めて購入する必要がない。一方で、【実験1】の実験に予定よりも多くの時間を要したために、【実験3】の薬理実験がほとんど遂行されておらず、薬剤を購入するところから始める必要がある。そこで、次年度は、手術関連費用を減額し、薬理実験関連費用に上乗せする。その他の項目については、研究計画書に記載した内容に従い、適切に使用する。
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