研究課題/領域番号 |
24791197
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
栃木 衛 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (40456116)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 遺伝学 |
研究概要 |
本研究は、自閉症患者の父親の生殖細胞(精子)におけるエピジェネティックな変異が自閉症の発症において果たす役割を明らかにすると共に、新たな候補遺伝子の同定を目指すものである。東大病院精神神経科および関連病院の通院患者を中心に、患者・家族の血液、および父親の精子の提供を受けることを目指し、サンプルが得られれば、父親の精子から抽出したDNAについてマイクロアレイを用いて全ゲノムにわたりメチル化の状態を定量し、健常対照群との比較によりメチル化の程度に有意な差のある領域を抽出することを目標とした。最終的には、患者・家族の血液から抽出したDNAでも同様の変異が認められないかどうかを調べ、父親の精子におけるDNAメチル化の変異の意義についての評価を行うことを目指した。 生殖細胞を扱うにあたっては、倫理的配慮が極めて重要となり、また社会通念上もサンプルの提供を受ける際に適切な説明を行う必要があると考えられたため、まず自閉症の遺伝研究において生殖細胞を扱うことの意義について理論的な検討を行った。その結果、精子のエピジェネティックな変異が自閉症の直接の原因となっている可能性があること、父親の年齢が上昇すると自閉症の罹患率が上昇するという報告が多数あること、エピジェネティクスの代表的なメカニズムであるインプリンティングの異常で現に自閉症関連疾患を発症すること、海外では既に解析の対象となっていることなどから、十分な意義があることを結論づけた。ただし、倫理的な配慮を重視し、サンプル収集についてはなお慎重を期することとして、実際の解析では血液サンプルから抽出したDNAでの解析を先行して行うこととした。現在、当研究機関にて自閉症患者の血液サンプルの収集を行うとともに、マイクロアレイを利用したメチル化の解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、自閉症患者の父親の精子の提供を受けることを目指していたが、倫理的配慮を重視し、実際のサンプル収集にあたっては慎重を期することとしたため。
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今後の研究の推進方策 |
倫理的な配慮を優先させるため、今後自閉症患者の父親の精子の提供を受けることが現実的には困難となる可能性も大きい。その場合は、現在当研究機関内で行われている血液サンプルを用いたメチル化解析を進めることにより、当初の研究目的の達成に寄与することを期することとする。また、自閉症の遺伝研究において生殖細胞を扱うことの意義についての理論的な検討は引き続き行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
血液サンプルを用いたメチル化解析に必要なマイクロアレイ、試薬等の消耗品代、学会出席のための旅費等に充てる。
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