研究概要 |
本研究のために、自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder; ASD)多発家系(発端者、双子の弟、父親、長姉、弟が罹患者、母、次姉、兄が非罹患者)において、健常者も含めた家系構成員8名から、末梢血を採取した。採取した白血球よりゲノムDNAを抽出した。遺伝形式として優性遺伝を想定し、多発家系構成員全8名のDNAサンプルを対象に全エクソンシークエンスを行った。 サンプルDNAを断片化し、Agilent Sure SelectによりDNAを濃縮し、Illumina Hiseq2000によるシークエンスに用いた。Hiseq2000による解析で鋳型DNAの両末端100塩基の配列を決定した。Hg19を参照配列として、CLC Genomics Workbench softwareによる解析を行った。得られた100塩基のDNA配列はpair endとしてmappingした。10倍以上のcoverageを持つ変異を対象に以後の解析を行った。 発端者では、116,607個の変異が見出された。エクソン領域で病因となる多型/変異は、コードするタンパク質の変化を伴うことが想定されるため、病因となる候補変異をアミノ酸の非同義置換を伴うものと、挿入/欠失を伴うものに限定した結果、13,187個の変異が残った。これらの変異のうち、5名の罹患者全てで見出された変異が8,174個で、非罹患者3名が持つ変異を除いたところ、298個の変異が残った。さらに、浸透率が高く稀な変異がASDの病因になっている可能性が高いと考え、候補変異をデータベースに掲載されていない多型/変異に限ったところ最終的に8個の変異が残った。これら8個の変異が位置する遺伝子のいずれかがASDの原因遺伝子である可能性が高いと考えた。今後、見出された遺伝子の機能を検討しASDの原因遺伝子を同定する必要がある。
|