研究課題
本研究は、統合失調症の発症やグルタミン酸受容体遮断薬による統合失調症様症状の誘発が発達依存的である(神経発達の臨界期以後である)ことに着目して、我々が同定した遺伝子(PRT6遺伝子)、およびPRT6遺伝子に含まれたマイクロRNAのターゲット遺伝子であるH-Z遺伝子、PST遺伝子について遺伝子関連解析を行うことを目的としている。そのうち、PRT6遺伝子にはtagSNPが存在せず、SNPsを用いた関連解析が困難であった。そのため、H24年度は日本人健常者160人と統合失調症患者160人の末梢血から得られたゲノムDNAを用いて、H-Z遺伝子の4箇所のSNPsとPST1遺伝子の8箇所のSNPsについて関連解析を行ったが、関連を示唆する結果は得られなかった。これはサンプル規模が小さいことによる検出力の低下に基づくものが考えられた。そこで、H25年度はサンプル数を増やし、日本人健常者2000人と統合失調症患者2000人の末梢血から得られたゲノムDNAを用いてH-Z遺伝子の関連解析を行った。これまでタイピングしたSNPsでは、疾患/対照群の間にallele頻度、genotype頻度の有意な差は見られなかった。しかし、性別解析を行ったところ、SNP02は男性における統合失調症との有意な関連を認めた(allelic P=0.003、genotypic P=0.008)。これらの関連は多重検定補正後も有意であった。H26年度は残りのSNPsのジェノタイピングを行ったが、SNP02以外での有意な関連はなかった。ハプロタイプ解析では、SNP02を含むハプロタイプが男性における統合失調症との有意な関連を認めた。以上の結果から、ヒストン関連遺伝子であるH-Z遺伝子と男性における統合失調症との関連が示唆された。今後、H-Z遺伝子を含むシグナル伝達機構の解明が統合失調症の病態理解に寄与する可能性がある。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
Journal of Neural Transmission
巻: 11 ページ: 1-9
10.1007/s00702-014-1332-x