統合失調症の治療に用いられる非定型抗精神病薬は、定形薬に比べ、体重増加や糖脂質代謝異常などの副作用が多いため、そのメカニズムの解明や事前予測は統合失調症薬物療法において重要な課題である。75g経口糖負荷試験を用い、統合失調症における耐糖能異常に関して糖負荷試験などの臨床データのみを用い、統合失調症における耐糖能異常の有病率を検討した。正常空腹時血糖の患者において、17.3%に耐糖能異常を認め、1.3%が糖尿病型であることを示した。空腹時血糖が正常である統合失調症患者においても、糖負荷後耐糖能異常の有病率は健常人よりも高い可能性があることを示した(結果①)。 2型糖尿病との関連が報告されたグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)受容体遺伝子rs10423928 (A/T)多型と抗精神病薬による体重増加の関係について、オランザピンを内服開始した統合失調症を対象にして検討した。GIPR遺伝子のAアレル保有患者は非Aアリル保有患者に比べ、4週間後の体重増加が有意に大きいことを初めて明らかにした(結果②)。オランザピン誘発性体重増加の事前予測に役立つ可能性を示した。 抗精神病薬がインクレチン・インスリン系に影響を与えるという仮説の元、未投薬時、アリピプラゾール内服時、クエチアピン内服時に経口糖負荷試験を施行しGIP濃度を測定し、HOMA-IRなどを同時に評価した。Area under the blood concentration time curve(AUC)-GIPは未投薬時に比べ、アリピプラゾール、クエチアピン内服時で高く、抗精神病薬の内服がインクレチン分泌の増大に関与している可能性が考えられた。この変化と糖代謝異常や体重増加がどのように関連しているのか今後も検討を進めていく。
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