研究課題
うつ病の遺伝環境相互作用を分子レベルから説明できる答えは未だ提示されていない結果、生物学的な病態を反映した診断検査法がなく、病因・病態に基づく治療戦略を立てることが困難である。したがって、上記の観点から、うつ病に関わる生物学的因子を明らかにし、有効な治療および予防の具体的戦略に繋がる情報を得ることは喫緊の課題である。本課題は、妊産婦コホート末梢血を用い、内分泌学的な変化や遺伝子のメチル化状態と気分変動との関連を検証し、遺伝環境相互作用の観点から病因・病態に関与する分子候補を同定することで、治療・予防の具体的戦略に繋がる情報を得ることを目的とした。内分泌学的変化については、ストレス応答ホルモンを含む数種の物質濃度が、出産前後で有意に変動することが確認されたが、気分変動と一貫して相関のある血中物質は同定されなかった。これはマタニティーブルー群や抑うつ群の検体数が少ないことに由来すると考えられるため、今後対象者数を増やして引き続き解析を行う必要がある。メチル化の解析では、低メチル化により発現することがゲノム不安定化の原因となるといわれており、近年がん研究分野において注目されているLINE-1の解析から、ゲノム全体の不安定化が妊産婦の気分変動と関連する可能性は低いことが示唆された。また、pyrosequencing法を用いた特定の遺伝子プロモーター領域の解析では、今回対象とした遺伝子に関しては、抑うつとメチル化の頻度に関連が認められなかったことから、産婦ゲノムを用いたBeadChipによるゲノム全体の網羅的解析を行った。その結果、産後抑うつと関連すると考えられるパスウェイが予試験的に抽出された。今後は出産による変化と抑うつによる変化を区別するためにも、妊婦のゲノムについて合わせて解析を行うとともに、例数を増やし、さらなる検証を行う必要がある。
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