家系内で複数の精神疾患罹患者を有する家系に対象を絞り、その家系内だけの希少変異を同定することで疾患の原因遺伝子を同定しようと計画した。当初10家系を収集する予定であったが、全エキソン解析の予算と、家系内で多数のサンプルを解析する必要性を併せて考慮すると、3家系行うことが限界であった。 第1の家系は水頭症と統合失調症様の精神症状を併せ持つ家系であり、その家系内から罹患者2名、非罹患者1名を選択し全エキソン解析を行った。罹患者のみにみられる一塩基置換を抽出し、更に同家系内から別の2名(1名は罹患者、もう1名は非罹患者)を加え、3名のエキソン解析から抽出した一塩基置換を対象に直接シーケンス法にて確認、候補を絞った。この家系については今後他大学と協力して研究を進めていく予定。 第2の家系は統合失調症とパニック障害の患者が複数存在する家系であり、三世代に渡り計6名の罹患者を有していた。罹患者2名、非罹患者1名で全エキソン解析を行い優性遺伝モデルで解析し、その結果を他の罹患者3名で検証した結果、罹患者のみに共通する一塩基置換は11遺伝子の11箇所に確認された。今後は、これら11遺伝子全てのエキソーム解析を弧発例の罹患者群で検証していく予定であるが、今年度中は実現がかなわなかった。 第3の家系は3世代に渡り統合失調症罹患者を12名有する大家系であり、その家系内から罹患者7名、非罹患者3名の検体を収集し、うち罹患者2名、非罹患者3名の検体を用いて全エキソン解析を行った後、その他の検体を用いて直接シーケンス法にて検証を行った。優性遺伝モデル、劣性遺伝モデル双方の解析結果から、2遺伝子に候補遺伝子が絞られた。いずれも統合失調症の原因としては新規のものであり、今後の展望次第では治療に結びつくような大きな成果をあげられる可能性があるが、これも今年度中に論文という形での成果発表とまではいかなかった。
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