研究概要 |
統合失調症発症の原因として中枢神経系の伝達物質の観点からドパミンおよびグルタミン酸を介したシグナル伝達系の異常が提唱されている。DARPP-32は蛋白質フォスファターゼ1(PP1)の脱リン酸化活性の抑制およびプロテインキナーゼA (PKA)の活性化の抑制をリン酸化依存的に行っているが、そのリン酸化レベルの調節はドパミン刺激、グルタミン酸刺激によって拮抗的に調節されている。DARPP-32には四ヶ所(T34, T75, S97, S130)のリン酸化サイトが存在し、T34, T75のリン酸化はそれぞれPP1, PKAの阻害に関与しておりS97,S130はT34, T75のリン酸化-脱リン酸化を調節しているものと考えられている。このようにDARPP-32はドパミン、グルタミン酸両経路の下流にあって双方のシグナルを集約してキナーゼ・フォスファターゼへとシグナルを伝達する脳内因子である。DARPP-32は統合失調症との関連において検討されており、我々も統合失調症患者死後脳サンプルを用いてDARPP-32, PP2B (DARPPを脱リン酸化する)の脳内における分布の解析をおこなっている(Kuniiら 2011 a, Kuniiら 2011 b, Nishiuraら2011, Wada, Hinoら2012)。 Pin1はペプチジルプロリル-シストランスイソメラーゼの一種で基質蛋白質のセリンスレオニン残基のリン酸化に依存して異性化を行う蛋白質である。本研究ではPin1がリン酸化依存的にDARPP-32を異性化する可能性について解析を行なっている。現在は生化学的解析のためDARPP-32、Pin1のコンストラクトを作成し、リコンビナント蛋白質の発現を行なっている。
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