研究課題
精神疾患患者では、心血管性疾患の罹患率が高いことが知られており、自律神経系の機能異常との関連が注目されている。我々は、前年度までに精神疾患患者における生活習慣病罹患率についての疫学的調査と、自律神経活動動態を調査し、患者群において自律神経機能が有意に低下しているが、生活習慣病罹患と自律神経活動との関連はみられなかったことを報告した。本年度はさらに、自律神経機能に対する抗精神病薬投与量などの臨床データや体質的な(遺伝的な)影響を検討した。1. 統合失調症患者200名を対象とし、安静時心電図を測定後、心拍変動パワースペクトル解析により自律神経活動を定量化した。対象者のアドレナリンβ3受容体の機能的遺伝子型(Trp64Arg)を同定し、各遺伝子型での自律神経活動を比較した。その結果、Argアレルを持つ多型キャリアとTrp/Trp(野生型)の2群間で、自律神経活動に有意差はなかった。一方、対象者の年齢、性別、疾患重症度、罹病期間と自律神経活動との間に相関はなかったが、抗精神病薬投与量と副交感神経活動との間には有意な相関(p=0.009)がみられた。2. 次に、患者群における身体活動の低下や運動不足の実態を解明するべく、慢性統合失調症患者の身体活動の調査を実施した。さらに、患者群に対して簡易運動プログラムを実施し、その効果について検証した。慢性期統合失調症患者43名、対照群として地域在宅高齢者25名を対象とし、全対象者の1日身体活動量を、身体活動量計を用いて測定した。その結果、患者群では、1日身体活動量、特に生活活動による活動量が、高齢者と比較して低下していた。また、入院患者では、1日歩数は多いものの、低い運動強度で歩行していることが推測された。長期入院中の統合失調症患者75名を対象に、開眼片足立ちによる運動介入を8か月間施行したところ、患者の身体能力の改善に効果が見られた。
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スポーツ精神医学
巻: 12巻 ページ: 印刷中