研究課題
強迫性障害(obsessive-compulsive disorder: OCD)の病態生理には前頭皮質-線条体回路の関与が示唆されているが、これまでの研究からは島皮質の脳構造異常ならびに脳機能異常も見いだされており、本研究では、OCDの病態生理において島皮質がどのように関与しているかを、複数のMRIモダリティーを用いて検証することを目的としている。当施設で収集したMRIデータを多施設共同研究グループであるOCD Brain Imaging Consortium (OBIC)に提供し大規模な解析を実施したところ、前頭皮質-線条体回路に含まれる背内側前頭皮質、前部帯状回、下前頭回とならんで、島皮質においても灰白質体積の減少が認められ、本研究の仮説の一部が実証された。この結果については、海外英文雑誌において報告した。さらに、特定の領域を結ぶ白質線維を評価するために、確率論的トラクトグラフィーの手法を用いた解析を行ったところ、OCD群では健常群と比べて眼窩前頭皮質と腹側線条体を結ぶ線維のFractional Anisotropy (FA) 値が高く、構造的結合性が亢進していることを見いだした。この結果は、先行研究で繰り返し示されている、前頭皮質と線条体の間の機能的結合の亢進と一致する結果と考えられた。
2: おおむね順調に進展している
強迫性障害群における島皮質における灰白質体積の減少を見いだし、その結果を論文化できた。さらにトラクトグラフィーの解析によって、強迫性障害群において眼窩前頭皮質と腹側線条体を結ぶ線維の機能的結合性亢進を見いだすことができた。これらの有意な結果が得られているため、研究は概ね順調に進展していると考えられる。
確率論的トラクトグラフィーの解析結果を論文化するとともに、確立した解析手法を他の白質線維にも応用する予定である。
本年度は研究活動の大半を確率論的トラクトグラフィーの解析法の確立にあて、旅費以外の支出がなかったため。本年度に確立したトラクトグラフィーの手法を、前頭葉と線条体を結ぶ線維以外の白質に網羅的に適応していくことを考えている。そのため、解析の補助を目的とした研究補助員を雇用することを考えている。
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