研究課題/領域番号 |
24791234
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
寺山 隼人 東京医科大学, 医学部, 助教 (00384983)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 精巣 / マウス / 炭酸リチウム / 精子形成 |
研究概要 |
炭酸リチウム(lithium carbonate)は、予防・治療薬として特に躁うつ病、うつ病に汎用されている。躁うつ病は遺伝要因の関与が高いといわれており、患者の約25%は15歳(思春期)以下で発症し、慢性化することが多く、再発率が高い。したがって、炭酸リチウムを長期にわたり内服することは珍しくない。リチウムは生体内で甲状腺や内分泌の機能調節に極めて重要な働きをしており、過剰状態では筋肉攣縮、成長障害、腎障害などを生じることが知られている。最近、性成熟期後の実験動物に炭酸リチウムを長期投与すると精巣機能に異常が起きることが報告された。しかし、性成熟期前の炭酸リチウム投与が精巣の発達や機能に与える影響を調査した報告はない。24年度は性成熟期前の雄マウスに炭酸リチウムを投与し、精巣の発達や機能に与える影響を調査ために、性成熟期後のマウスを用いて、投与量や精巣毒性の有無などを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究科研費で購入した躁うつ病やうつ病の予防・治療薬である炭酸リチウムを性成熟前のマウスに投与する前段階として、炭酸リチウム投与量を検討した。まず、8週齡ICRマウスの雄に1(約70mg/day)、0.1 (7mg/day)、0.05 (3.5mg/day)、0.01 (700ug/day)%炭酸リチウム含水道水およびコントロールとして水道水を3ヶ月与えた(自由摂取:6-7ml/day)。炭酸リチウムは治療域と中毒域の濃度が近い事で知られている。1%炭酸リチウム群は4週間以内に腎障害のためすべて死亡した。残りの0.1、0.05、0.01%炭酸リチウム群およびコントロール群の3ヶ月後精巣をテクノビット包埋(Heraeus Kulzer社)し、ヘマトキシリンエオジン染色で精子形成障害程度を光学顕微鏡下で観察した。0.1、0.05および0.01%炭酸リチウム群は精細管内の精細胞の脱落(特に精子細胞や精母細胞)を認めた。また、マウスの炭酸リチウム摂取に対して濃度依存的に精細胞の脱落像が増悪する傾向にあるものの、低濃度ほどマウスによって毒性感受性に違いがあり、個体差が影響している事が明らかになった。以上、本年度で炭酸リチウムの濃度が決定した。
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今後の研究の推進方策 |
24年度の結果を参考に最終年度である25年度は性成熟前の雄に0.1 (7mg/day)、0.05 (3.5mg/day)、0.01 (700ug/day)、0.005(350ug/day)%炭酸リチウム含水道水およびコントロールとして水道水を1ヶ月与える(自由摂取:6-7ml/day)。中毒域濃度が成獣マウスより低いと予想されるため、投与期間を1ヶ月とした。そして、1ヶ月後の精巣をテクノビット包埋(Heraeus Kulzer社)し、ヘマトキシリンエオジン染色で精子形成障害変化を光学顕微鏡下で観察する。24年度の結果を踏まえ、精細胞の脱落が予想されるため、タイトジャンクションに関わる因子や精子の障害程度を遺伝子やタンパク質レベルで調べ、さらにサイトカイン動態や炎症細胞の有無などの精巣内免疫環境の変化を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は総額800千円の研究経費を計上した。その積算根拠として、実験動物のためのマウス代(食餌含)300千円を計上した。さらに、消耗品としてスライドグラス100千円、炭酸リチウム15千円、脱落の要因や精巣の免疫環境を調べるための薬品類(タンパク質や遺伝子抽出試薬、リアルタイムPCR用試薬、ウエスタンブロット用試薬他)385千円を計上した。
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