研究課題/領域番号 |
24791236
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 寛栄 日本医科大学, 医学部, 助教 (50386744)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ADHD / SHR / 神経伝達 / シナプス |
研究概要 |
臨床現場で用いられているADHDの症状改善薬はシナプス間隙のドーパミン濃度もしくはノルアドレナリン濃度を相対的に上昇させるものが多いことから,ADHDはドーパミンとノルアドレナリン神経伝達の機能的もしくは量的比率の変化に起因するとの仮説を立てた.これを検討するために,ADHDモデルラットと対照ラットにおいてADHD発症責任部位とされている領域(前頭前野・小脳虫部・大脳基底核)でのドーパミン濃度とノルアドレナリン濃度を測定する.また,症状改善薬投与前後で対照ラットと比較してADHDモデルラットではこれらの濃度がどう変化しているのかを検討すると共に,スライス標本にパッチクランプ法を用いることでGABA由来のIPSCがドーパミンとノルアドレナリンにより受ける修飾の比率が変化しているかを検討する.最終的に新たな治療薬を探索する. ADHDモデルラットである自発性高血圧発症ラット(SHR)を定期的に入手するためにSHR等疾患モデル共同研究会に入会する必要があった.この手続きが終了するまでの時間浪費を避けるため,正常ラットの小脳プルキンエ細胞でのシナプス可塑性を調査した.誘発した抑制性シナプス後電流(eIPSC)を外向き電流として記録し,プルキンエ細胞を脱分極させるとeIPSCは内向き電流となった後,外向き電流に戻るものの振幅は減少した状態が20分間以上持続した.細胞外溶液にはグルタミン酸受容体拮抗薬とGABAB受容体拮抗薬,CB1受容体拮抗薬を添加してあるので過去に報告された逆行性の抑制や増強の影響ではないと確信した.そこで,この現象をDDIと名付けた.さらなる実験により,この現象はカルシウム依存性クロライドチャネルとクロライドトランスポーター(NKCC)によって細胞内クロライドイオン濃度が上昇して起こっていることを解明したので論文として投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定外であったがDDIの機序を解明し投稿することができた. 現在の所,生後二週間までは前頭前野の錐体細胞で記録されるeIPSCに対するドーパミンの修飾効果は,ADHDモデルラットと対照ラットの間で有意差がないことを見出している.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は生後三週齢以降の動物を用いて電気生理実験を中心に推進していく. また,eIPSCに対するドーパミンの修飾効果だけではなく,ノルアドレナリンの修飾効果も検討する.さらに,ドーパミン・ノルアドレナリンのバランス異常により副次的にセロトニン系が変異している可能性があるので,セロトニンの修飾効果も検討する. DDIが論文として発行されれば,DDIがADHDモデルラットと対照ラットで違いがあるかを検討することが出来るようになるので今後の研究の推進に大いに役立つ.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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