研究課題/領域番号 |
24791236
|
研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 寛栄 日本医科大学, 医学部, 助教 (50386744)
|
キーワード | ADHD / SHR / 神経伝達 / シナプス |
研究概要 |
ADHD発症責任部位とされている領域(前頭前野・小脳虫部・大脳基底核)での変化を知るために,スライス標本にパッチクランプ法を用いてGABA応答がドパミンとノルアドレナリンにより受ける修飾の比率を検討した.ADHDモデルラットである自発性高血圧発症ラット(SHR)を定期的に入手するためにSHR等疾患モデル共同研究会に入会する必要があった.この手続きが終了するまでの時間浪費を避けるため,正常ラットの小脳プルキンエ細胞でのシナプス可塑性を調査した.誘発した抑制性シナプス後電流(eIPSC)を外向き電流として記録し,プルキンエ細胞を脱分極させるとeIPSCは内向き電流となった後,外向き電流に戻るものの振幅は減少した状態が20分間以上持続した.実験条件から過去に報告された逆行性の抑制や増強の影響ではないと確信し,この現象をDDIと名付けた.さらなる実験により,この現象はカルシウム依存性クロライドチャネルとクロライドトランスポーター(NKCC)によりCaMKII依存的に細胞内クロライドイオン濃度が上昇して起こっていることを解明し,論文として発表した(Satoh et al., 2013).また,この現象については第91回日本生理学会大会(鹿児島)で発表した.ADHDモデルラットとしてSHRの前頭前野内側部(medial prefrontal cortex; mPFC)の前辺縁皮質(prelimbic cortex; PL)の第五層錐体細胞よりeIPSCを記録してドパミン,ノルアドレナリン,セロトニンによる修飾効果を検討した.その結果,二週から四週齢においては有意差を見いだせなかった.しかし,前帯状回(anterior cingulate cortex; ACC)の第五層錐体細胞では対照ラットにおいてドパミンはeIPSCの振幅を増大させるが,SHRではその修飾効果が有意に減少していた.対して,ノルアドレナリンは両者間で修飾効果に差はなかった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定外であったがDDIの機序を解明し学会・論文発表できた. 現在の所,ACCでみられたeIPSCに対するドパミンの修飾効果の違いがどのような機序で生じているのかを検討しているところである.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は生後四週齢以降の動物を用いて電気生理実験と行動実験を平行して推進していく. また,eIPSCに対するドパミンの修飾効果だけではなく,ACCにおけるセロトニンの修飾効果も検討する.行動実験は対照ラットにドパミン受容体遮断薬をACCに微少投与してADHD様症状が引き起こされるのかを検討する.併せてモデルラットにADHD治療薬やドパミン受容体作動薬をACCに微少投与してADHD様症状が改善するのかを検討する.DDIが論文発表できたのでADHDモデルラットと対照ラットで違いがあるかを検討することも視野に入れて推進していく.
|