研究課題
本研究はECTの治療効果判定の生物学的指標にNIRSが臨床検査として活用できるか検討することが目的であった。ECTは大阪医科大学付属病院手術室で麻酔科医の身体管理のもと行ない、NIRS測定には22チャンネルのNIRS装置(ETG-4000:日立メディコ)で言語流暢性課題を用いて測定を行った。ECT10回施行を治療1クールとして、その前後2ポイントでNIRS測定を行なった。ECTの治療効果判定に、うつ病はHAM-D、統合失調症はBPRSを用いて評価し、NIRSの前頭葉と側頭葉血液量の積分値変化との関連を調査した。対象患者は、うつ病10名と統合失調症8名であった。全ての症例でECT後にHAM-DとBPRSの改善を認め精神症状は改善した。うつ病において、10名全体ではHAM-Dの改善とNIRSの前頭葉と側頭葉血流量の積分値変化との間で関連は認めなかった。しかし、HAM-Dのスコアが25点以上の重症のうつ状態を呈していた群ではHAM-Dの改善とNIRSの前頭葉と側頭葉の積分値変化とで関連を認めた。また、メンテナンスECTを行っている統合失調症群では、NIRSの前頭葉や側頭葉血流量の積分値減少が精神症状の増悪と一致し、メンテナンスECTを行うことで精神症状の改善に伴い積分値の増加を認めた。 ECT前に緊張病症状が強くNIRSを行うことが出来なかった初発の統合失調症群では、ECT後で精神症状改善した後に測定したNIRSの前頭葉や側頭葉積分値で、統合失調症のメンテナンス群と比べ優位に高い値を認めた。本研究からECTの治療効果判定の生物学的な指標の一つにNIRSが成り得る可能性が示唆されたが、更に症例の集積が必要であることに加えて、今後は言語流暢性課題以外の例えばストループ課題などの他のタスクと組み合わせて、ECTの治療効果を反映できる可能性を広げて研究を続けていく。
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