グルタミン酸神経伝達と統合失調症陰性症状の関連が提唱されており、本申請研究課題は、グルタミン酸受容体を標的とした統合失調症治療の開発を目的とした。代謝型グルタミン酸受容体5型 (mGluR5)とカンナビノイド受容体1型(CB1R)の関連に着目し、CB1Rの内因性リガンドは、意欲、満足感といった脳内報酬系を制御し、その破綻は陰性症状の本質と考えた。mGluR5からのCB1Rへの作用、CB1Rの細胞内情報伝達系の解析を目的として、本研究で、mGluR5活性調節によるCB1Rを介したグルタミン酸情報伝達の解明を行った。 研究実績としては、研究実施計画に基づき、マウス線条体スライスを用いた、CB1Rアゴニスト、アンタゴニスト刺激により、シナプス後細胞に特異的に発現するリン酸化蛋白dopamine- and cAMP-regulated phosphoprotein of 32 KDa (DARPP-32) のリン酸化解析を、ウエスタンブロット法で測定した。ここでは、CB1Rアゴニストによって、DARPP-32のスレオニン34残基リン酸化亢進する新しい知見が得られた。この効果は、近接するドーパミンD2受容体、アデノシンA2a受容体の修飾を受けていた。mGluR5からの、CB1Rへの関与を調べるため、mGluR5内のリン酸化修飾による機能変化の解析を行った。その結果、mGluR5がプロテインキナーゼA(PKA)によるリン酸化修飾を受けることを初めて明らかにした。CB1Rへの関連、関与として、内因性カンナビノイドのシナプス後細胞からの産生・放出に至る経路までは研究を進めることはできなかった。しかし、mGluR5のPKAによるリン酸化修飾は、論文にまとめ発表することができた。
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