本研究では、他者が求める同情に対して抵抗が生じる背景に、どのような認知神経メカニズムが関与しているかを明らかにすることを目的とした。そのために、fMRIを用いて同情への抵抗を惹起する課題を施行し、その脳内機構を明らかにするための研究を以下のように計画し、実施した。 まず、同情への抵抗が生じる要因を明確にするための行動実験を行った。Implicit Association Testを工夫した行動実験を作成し、被験者30人を対象に行動データ取得を行い、Quad modelなどを用いて潜在反応と顕在反応を個別に抽出するための定量解析した。さらに、被験者の情動や共感性などの個人差を計測するための質問紙データを取得し、行動実験との関連を検討した。他者の視点取り能力との関連が見られ、他者の心情理解が重要な要因のひとつである可能性を示唆する結果を得た。 次に、行動実験で得られた結果を利用し、fMRIを用いて同情への抵抗に関わる神経メカニズムを明らかにするためのfMRI実験を行った。他者との関連性を実験条件によって変動させ、他者への同情が生じうる状態と抵抗が生じる状態を惹起するためのfMRI課題を作成し、脳活動計測を実施した。さらに、脳活動の背景にあるい神経伝達物質との関係性を検討するために、PETを用いてドーパミン神経伝達機能を計測し、データ取得を完了した。fMRIを用いて得られた認知データと脳活動データ、PETを用いて得られたドーパミン神経伝達機能データの解析を開始した。同情への抵抗の認知神経メカニズムについて、国内外での発表と国際誌への投稿準備を開始した。
|