研究課題
胸部手術を予定されている高齢がん患者において、社会支援、身体機能(栄養、併存症)、認知機能、精神状態を評価した。概して、多くの領域において一定数の患者が障害を有することが明らかになった。外科手術後の支援において重要な要素である居住形態は、8%が独居、夫婦2人暮らしが49%であり、日常生活で外出が困難な患者を支援する上で、一般的な介護力の目安となる1.5人以下のケースが57%に上った。栄養スクリーニングでは、20-27%が低栄養ないし低栄養リスク状態と判定された。一般的に術後は栄養障害が増悪することを考慮すると、きわめてリスクの高い患者群であると考えられる。日常生活機能(ADL、IADL)では、Performance Statusが2以下と臨床評価としては高機能の患者が大半であるにもかかわらず、ADLに種々の障害を認め、買い物や日常生活上の移動で問題となることの多い階段昇降では、1階分の移動にも困難を感じる患者が7%いた。日常生活機能IADLの障害は、電話の使用が困難(4%)から食事の準備が独力では困難(30%)まで幅広い障害を認めた。とくに外来治療に移行する上で問題となる交通機関を使った移動については9%に障害を認めた。また、外来治療でのアドヒアランス維持の基本となる内服管理については5.6%で困難との評価であった。体系だったモニタリング、ニーズ検出後のケアデリバリーの最適化のために、マネージャーの検討、セルフケアを促進する教育資材、治療チームに対する専門家によるスーパーバイズ、重症度に応じたステップドケアなどが重要と考えられた。
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