研究課題/領域番号 |
24791253
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
中鉢 貴行 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所・児童・思春期精神保健研究部, 科研費研究員 (40615530)
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キーワード | 小脳大脳連関 / 神経発達障害 |
研究概要 |
平成25年度の研究では、自閉症スペクトラム障害の限局的反復的行動の基盤をなすと言われている実行機能障害に関する脳活動を捉える臨床検査法の開発を試みた。その中で、児童であっても広く応用可能な「しりとり」に注目し、児童にも抵抗なく適用できる脳機能画像計測法である光トポグラフィーによる計測を健常成人25人に対し行ったdataを解析した。その結果、前頭葉と前頭側頭葉に渡る広い範囲に有意な脳活動を検出することに成功した。このことにより、しりとりは前頭葉機能に大きな負荷をかける課題であり、しりとりの実行機能課題としての適用可能性が示された。また、しりとりとNIRSの組み合わせで、自閉症スペクトラム障害児童の限局的反復的行動に深く関わる実行機能のバイオマーカーを検出できる可能性があることが示唆された。 さらに、2つ目の研究として、自閉症スペクトラム障害の限局的反復的行動のバイオマーカー候補である小脳が、認知機能に与える影響を調べるために、幼児期に小脳の右半球を欠損した発達障害症例において、把握運動時の大脳一次運動野の神経活動を光トポグラフィーにより計測した。その結果、右一次運動野は健常者と同様の神経活動を示したが、左一次運動野の神経活動には有意な非定型性が見られた。これは、小脳由来の発達障害患者において、小脳の障害が小脳大脳連関を通して反対側の大脳半球の代謝に反映されるcrossed cerebello-cerebral diaschisisという現象を機能面から捉えた貴重な臨床的知見であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自閉症スペクトラム障害の限局的反復的行動のバイオマーカーの探究に大きく関連する、光トポグラフィー装置を用いての、実行機能課題遂行中の脳活動の研究と、小脳の損傷による大脳機能障害の研究の論文は、ともに英文の学術誌に投稿する直前まで完成していることから、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の前半には、光トポグラフィー装置を用いた実行機能課題遂行中の脳活動の研究と、小脳の損傷に起因する大脳機能障害の研究に関する論文2本を、それぞれ異なった英文学術誌に投稿する予定である。 平成26年度の後半には、新たな脳機能画像解析に挑戦する。この中で、拡散テンソル画像法を用いて、自閉症スペクトラム障害と関連の深い小脳性神経発達障害症例においてcerebello-cerebral diaschisisの主原因と予想される上小脳脚の描出を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究計画の申請後に、使用予定機器の一つである当研究部所有の近赤外分光計では正確な脳血流の測定が皮膚血流の混入により困難であるという高いevidenceを示す論文が発表され、専門家の間でも機器の改良の研究の議論が高まっている状況を鑑み、その機器を用いての実験を始めることを見直すこととなったため、その実験に使う予定であった経費に未使用額が生じた。 上記の理由により、計画していた実験の一部を他の機器を用いて行うこととなったため、その機器が設置してある研究機関への旅費に\150000、研究データの解析用パソコンソフトの更新費用に\71500、その研究成果の学会発表のための学会参加費と旅費に\100000、研究データをまとめた論文を作成するに当たり、図表作成用パソコンソフトに\100000、論文の英文校閲、投稿費用に\82885の使用を予定している。
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