研究課題
平成26年度の研究では、自閉症スペクトラム障害の反復的限局的行動の主要な原因であると考えられている実行機能の障害を調べるために、日本において幼児でも実施可能な実行機能課題であるしりとり課題を光トポグラフィーによる計測下で実施したデータに対し、いくつかの新しい解析手法の適用を試みた。その結果、しりとり課題は、従来の語産生課題に比べ、前頭葉のみならず側頭葉領域も大きく賦活できる課題であることが見出された。このことから、前頭葉のみならず側頭葉領域にも障害が検出されている自閉症スペクトラム症や統合失調症などの神経発達障害の実行機能を評価する上でしりとり課題は有用であることが示唆された。また自閉症スペクトラム障害で多く報告されていて反復的限局的行動への関連が示唆されている小脳の機能障害について、平成25年度には小脳に直接損傷を持つ患者に光トポグラフィーを適用した研究において、小脳の障害が反対側の大脳半球の機能低下を誘発することを示唆する知見を得たが、平成26年度は、把持運動中に脳磁図を用いて計測したデータの解析により、この知見を支持補強する結果を得た。この結果は、小脳の機能不全が前頭前野及び大脳基底核の活動低下を招くことを示唆し、小脳の機能不全が、自閉症スペクトラム障害の実行機能障害および反復的限局的行動のバイオマーカー候補の一つであることを支持する知見である。なお、上記の研究成果は、現在英文学術専門誌に投稿中である。
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Frontiers in human neuroscience
巻: 8 ページ: 406
10.3389/fnhum.2014.00406