統合失調症では従来よりドーパミン作動性神経の異常が病態、病因に関与していることが指摘されており、また中枢刺激薬によりドーパミンが過剰に放出される事が明らかとなっている。しかし臨床場面で診断に応用するまでにはいたっていない。そこで本研究ではポジトロン断層法(PET)を用い、統合失調症モデル動物における中枢刺激薬の反応性を解明し、統合失調症の診断法の開発を目的とする。 方法としては実験動物に対してメチルフェニデートの単回投与前後で[18F]fallyprideを用いたPET検査を行い脳内におけるドーパミンD2受容体の密度を測定、そこからドーパミン放出量を推測する。次にメタンフェタミンの投与により統合失調症モデル化した個体に対してもう一度メチルフェニデートの投与前後でPET検査を行い、脳内における中枢刺激薬への反応性の変化を検証する。 平成24年度には国内ではほぼ使用実績のない核種である [18F]fallyprideの合成実験および品質検定や、ドーパミン受容体測定方法の検討を行い、[18F]fallyprideの解析方法を確定した。その後平成24年度から25年度にかけて6体の統合失調症モデルラットに対してメチルフェニデート負荷試験を行った。その結果、統合失調症モデル化後はモデル化前と比較してメチルフェニデート負荷によるドーパミン放出量が増大していることを確認した。続いて平成25年度からはマーモセットに対する[18F]fallyprideを用いたPET研究を開始した。これまでに6体のマーモセットに対してメチルフェニデートの単回投与前後で[18F]fallyprideを用いたPET検査を行い脳内におけるドーパミンD2受容体の密度分布やその統計解析を終了している。今後は統合失調症モデルマーモセットの作成およびそのメチルフェニデート負荷試験の有効性の検討を行っていく。
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