研究課題/領域番号 |
24791255
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大澤 要介 慶應義塾大学, 医学部, 研究員 (50528429)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ペルオキシレドキシン / 概日リズム / 赤血球 / BRET |
研究概要 |
赤血球におけるヒトペルオキシレドキシン2(PRX2)の二量体形成と単量体への解離の概日リズムを生物発光共鳴エネルギー移動(Bioluminescence resonance energy transfer: BRET)を用いて測定するための発現ベクターを構築した。ドナープローブとして、PRX2のN末端あるいはC末端にウミシイタケのルシフェラーゼを融合タンパクとして発現するように作製した。一方、アクセプタープローブとして、PRX2のN末端あるいはC末端にEYFPの改変蛍光タンパクVenusの173番目のアミノ酸が先頭になるように円順列変異を導入したVenus cp173を融合タンパクとして発現するように作製した。ドナー・アクセプターともにプローブがN末端にある融合タンパクの方がHEK293細胞において発現量が高く、S-S結合による二量体形成能も保持されていた。 上記のBRETコンストラクトを赤血球で発現させるため、ヒト末梢血から網状赤血球を分画した。85% Percollに抗凝固剤としてEDTAを添加した全血を重層し、超遠心により分離した。得られた画分をニューメチレン青染色した結果、網状赤血球が50%以上含まれていた。しかし、これらの網状赤血球にエレクトロポレーションまたはリポフェクションによりBRETコンストラクトを導入したが、両者ともに十分な蛍光強度が得られなかった。 以上の研究からPRX2の二量体形成能を保持したBRETコンストラクトを作製することができた。また、PRX2の概日リズムを測定するために十分な量の網状赤血球を分画することもできた。これらの材料を用いて、赤血球におけるPRX2の概日リズム特性を詳細に調べることができると考える。これらの成果は視交差上核の中枢時計と末梢組織の末梢時計の位相が解離しているような内的脱同調の発症メカニズムの理解に寄与できると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者は昨年の10月から現在の所属に転職した。前職の国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神生理部はBRETシグナルを経時的に測定するための光電子増倍管を搭載したLumicycle (Actimetrics)を所有していたが、現所属ではそのような機器がなく、類似の機器が平成24年度予算では購入できなかったため、BRETシグナルの経時測定は翌年度に持ち越しになった。
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今後の研究の推進方策 |
BRETコンストラクトをヒト網状赤血球に遺伝子導入したが、十分な蛍光強度が得られなかったことから、網状赤血球に残存するRNAポリメラーゼは極めて少なく十分な転写が行われていないことが予想される。申請時に参考にした多くの文献では、再生不良性貧血の回復期のウサギ末梢血に多く含まれる網状赤血球を使用していたため、ヒトの末梢血から得た網状赤血球よりも幼弱であり、成熟赤血球に至るまでの期間が長いため、十分なRNAポリメラーゼが存在していたと思われる。今後はBRETコンストラクトからT7 RNAポリメラーゼを用いて、in vitro転写で合成したmRNAを導入することを試みる。ウサギ網状赤血球のライセートでは5'末端に7メチルグアノシンのキャップ構造をもったmRNAの方が翻訳の効率がよいことがわかっているので、5'キャップ構造も付加させる。 PRX2のBRETシグナルを経時的に測定するための光電子増倍管を搭載したクロノスDio (ATTO)を購入し、BRETシグナルを測定する
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度予算と平成25年度予算を合算して、PRX2のBRETシグナルを経時的に測定するための光電子増倍管を搭載したクロノスDio (ATTO、2,373,000円)を購入する。未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。
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