研究概要 |
ベンゾジアゼピン系睡眠薬の長期使用は2.0~7.4%みられ、睡眠薬を処方されている患者では25~76%もの患者が長期使用であったと報告されている。長期使用の1番の危険因子は加齢であるとする報告もある。しかし、日本における睡眠薬の長期使用の実態は明らかとされていない。そこで、本研究では、大規模診療報酬データを用いて睡眠薬の長期使用の実態およびリスク因子を明らかとすることを目的して行った。 加入者約33万人の複数の健保団体の大規模診療報酬データを利用した。2005年4月〜2008年3月の間に睡眠薬を初めて処方された患者3,981人の診療報酬データを月ごとに2009年3月まで抽出した。睡眠薬処方初月から12ヶ月間を観察期間とし、睡眠薬の処方継続のリスク因子を明らかとするために時間依存型Cox比例ハザードMayo updated モデルを用いて解析を行った。睡眠薬の処方中止をイベントの発生、途中で健康保険組合を脱会した患者は打ち切りと定義した。 対象患者は3,981人(M:2,382、F:1,599)平均年齢40.3±12.4歳であった。健保団体からの脱退または処方中止による観察打ち切りは3,579人、12ヶ月間の観察が可能であった患者は402人(10.1%)であった。単変量解析の結果、併用薬剤(抗不安薬、抗うつ薬、抗精神病薬)、睡眠薬を初めて処方した処方診療科が精神科、高い処方量、女性、年齢のリスク因子は睡眠薬の中止とすべて有意に関連していた(p<0.05)。多変量解析の結果、抗うつ薬の併用、高い平均処方量、高い年齢が睡眠薬の処方中止のリスクを有意に下げていた(p<0.01)。 抗うつ薬の併用、高い平均処方量、加齢が睡眠薬の処方中止の相対リスクを下げていた。すなわち、処方継続の相対リスクを増大させていた。うつ病と不眠症を合併している患者において長期処方となるリスクが高いことが示唆された。
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