研究概要 |
1988年1月から2008年12月の20年間に北海道大学病院第一外科で乳房温存術を施行し、温存乳房に対し術後照射を行った約400症例の中で、局所再発を来した20症例中19例について、手術時の検体から、未染色標本を切り出し、HER2,EGFR,AMAP1,GEP100の免疫染色を行った。各々の免疫染色標本を2人の病理専門医が独立して評価しスコア化を行った。年齢、リンパ節転移の有無といった従来局所再発と関係があると考えられてきた臨床データと再発時期の相関関係及び免疫染色の結果と再発時期の相関関係について統計解析を行った。 初期解析の結果を第54回米国放射線腫瘍学会(2012年10月28ー31日 ボストン)で示説展示発表を行った。更に統計解析を加えた結果、AMAP1とGEP100がともに発現していると早期に再発する事が示された。一方、従来、局所再発のリスク因子として知られてきた年齢、手術時の断端状況は再発時期と有意な関係は認められなかった。現在この結果を英文学術誌に投稿中である。 これまでMamma Print等の遺伝子解析によって遠隔転移のリスク因子が明らかになってきたが、局所因子のマーカーは確立されていなかった。今回、AMAP1とGEP100の発現が早期再発に関わる事が示されたことによって、これらのマーカーが局所再発そのものに関わっている可能性が示唆された。局所再発そのものに関連がある事が示されると治療前に局所再発リスクの診断が可能となり、治療法に影響を与える可能性がある。
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