研究課題
北海道大学病院第一外科で1988年1月~2008年12月の20年間に乳癌に対して乳房温存術を施行した症例でかつ術後温存乳房に対して術後照射を行った症例479症例483乳房について検討を行った。前年度までに局所再発症例20例のうち19症例の未染標本を切り出EGFR,HER2,GEP100,AMAP1蛋白の免疫染色を施行し、2人の病理専門医によって評価しスコア化を行った。また年齢、リンパ節転移の有無、ホルモンレセプターの発現状況といった従来局所再発に影響を与えると考えられてきた臨床因子を調査した。これらの臨床所見及び免疫染色の結果と再発時期の関係について統計学的解析を行った。 臨床データと再発時期に明らかな関係は認められなかった。各々の蛋白と再発時期についてはStepwise regression AnalysisでAMAP1とGEP100及びその組み合わせが早期再発に有意に影響している事が示された。本年度は上記に更に統計解析を加え、Kaplan-Meier法で、GEP100とAMAP1が共に陽性であると早期再発を来していることが示された。この結果をPLos ONEに投稿し、受理された。乳癌術後照射を行うにあたって、周囲正常組織への照射線量の低減とターゲットへの十分な線量投与を目指す為、陽子線による治療を検討すべく下記の検討を行った。当院に導入された陽子線治療装置は本体のみでは体表近くの浅い部分に対して正確に照射を行う事が原理的に難しい為、線量分布を調整する何らかの器具が必要となる。陽子線治療使用可能な.decimal社製のボーラス(深さ方向の線量分布を調整する器具)が実際の患者に対して使用可能かどうかを検証する目的で、電子線による治療を行う患者に対して、治療計画用CTを用いて.decimal社のボーラスの設計・作成を行い実際の治療で使用し、装着可能である事を確認した。
3: やや遅れている
再発例に対しては学術論文に受理され予定通り進行した。非再発例については解析に時間がかかっており、遅れている。陽子線治療計画については体表近くの浅い部分に対する照射法の検討を行っており、全体としてはやや遅れていると言う自己評価となる。
平成26年度は再発リスクに応じた照射野・線量分割を考案する。引き続き体表近くの浅い部位に存在するターゲットに対す照射の為の検討を行う。乳癌の術後照射ではターゲットが体表面からの距離が様々であり、また複雑な形状をしている。これらのターゲットに対し、陽子線によって最適な照射を可能とすべく乳癌に限らず様々な部位の疾患に対する線量分布図の作成し、複雑な形状のターゲットに対し安定した照射を行う方法を検討する。また最適な治療体位の検討を行う。非再発例については引き続き解析を継続する。
試薬の購入が研究の進行に伴い一部26年度にずれ込んだこと、本年度は海外での研究成果報告を行わなかった事が挙げられる。解析の継続の為の試薬の購入。最適な治療体位の検討のための固定用具の購入。
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PLoS One
巻: 8 ページ: e76791
10.1371