研究実績の概要 |
初めに乳房温存術後の局所再発にかかわる分子生物学的性質の検討を行った。1988年から2008年に乳房温存療法を施行された483例中、2010年の時点で20例に局所再発が認められていた。20例中19例についてEGFR,HER2,GEP100,AMAP1蛋白の免疫染色を施行した。免疫染色と再発時期の相関を解析した結果、AMAP1とGEP100およびその組み合わせが早期再発に有意に影響を与えている事が示された。また年齢、リンパ節転移の有無、ホルモンレセプターの発現状況といったこれまで局所再発に影響を与えるとされてきた因子と再発時期に明らかな関係は認められなかった。これらの結果を論文化しPlos ONEに受理された。 次いで、再発リスクに応じた放射線治療の検討を行った。陽子線治療の有用性を検討する目的で①X線による3DCRT(thoree dimensional conformal radiotherapy)、②X線よるIMRT(intensity modulated radiotherapy)、③陽子線によるSSPT(spot sccanning proton beam therapy)の3種類の方法で乳房温存術後に温存乳房と領域リンパ節に対する治療計画を作成し比較を行った。SSPTではX線による3DCRTやIMRTと比較し患側肺の線量が低減されていた。 平成27年度はこの結果を元に、どのような照射の際に陽子線治療が有用か検討を行うためにA:温存乳房、B:温存乳房+腋窩及び鎖骨窩リンパ節領域、C:温存乳房+腋窩、鎖骨窩及び傍胸骨リンパ節領域の3つの異なる範囲のCTV(Clinical target volume)に対する放射線治療をX線によるIMRT,陽子線によるSSPTで作成し、ターゲットに対する照射線量、正常組織(患側肺、健側肺、心臓、対側乳房)の照射線量の比較を行った。IMRT,SSPTいずれの方法でもよりもCはのPTVSSPTはいずれのプランでもIMRTと比較し患側肺の照射線量が低減されていた。
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