研究概要 |
本年度は、ヒト扁平上皮癌細胞株におけるbHLH型転写因子DEC1・DEC2の発現・機能を、分子生物学的手法を用いて解析した。用いた細胞株は、分化度の異なるヒト食道扁平上皮癌細胞株(TE-10とTE-5)とヒト口腔扁平上皮癌細胞株(HSC-3, CA9-22)である。我々は、2種類の食道癌細胞株に対し、DEC1 knockdownを行い24時間後にタンパクを回収しウェスタンブロットで確認したところ、DEC1がcyclin D1を制御していることが判明した。同様の結果は、舌癌細胞株(HSC-3)においても認められた。これらの結果から、DEC1がcyclin D1を制御して、ヒト扁平上皮癌の概日リズムを制御していることが示唆された。さらに、これら4種類のヒト扁平上皮癌細胞株(TE-10, TE-5, HSC-3, CA9-22)に対しシスプラチン処理の下、DEC1 knockdownあるいはoverexpressionを行い、DEC1がアポトーシスに及ぼす影響を検討した。その結果、DEC1はTE-10ではアポトーシス促進性に働くのに対し、TE-5やHSC-3およびCA9-22においては明らかなアポトーシス作用が認められないことが判明した。次に我々は、4種類の細胞株に対してシスプラチン処理の下、DEC2 knockdownあるいはoverexpressionを行った。この結果、DEC2はHSC-3ではアポトーシス抑制性に働くのに対し、TE-10やTE-5およびCA9-22においては明らかなアポトーシス作用を示さないことが判明した。以上の結果から、DEC1・DEC2のアポトーシス作用に関しては、細胞株や分化度の違いにより異なる可能性があることを解明した。
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