研究課題/領域番号 |
24791266
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
廣瀬 勝己 弘前大学, 医学部附属病院, 助手 (60623767)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | HIF-1a / 放射線増感 / ニトログリセリン |
研究概要 |
A549細胞株を用い,培養細胞にNTGを投与し,X線を照射した.コロニー形成法により放射線増感作用を検討した.通常酸素条件下ではNTGは低濃度投与において放射線増感作用や防護作用を示さなかった.培養細胞にNTGを投与し,経時的に細胞を回収し,ウェスタンブロット法を用いてHIFおよびDNA二重鎖切断修復に関与するATMの発現を解析した.HIFおよびATMのバンドに増強がみられた.フローサイトメトリーにて細胞周期を解析したところ,X線照射とNTG暴露によって細胞周期に大きな変化は認めなかった.低酸素下で培養した細胞にNTGを投与し,経時的に細胞を回収した.低酸素暴露で処理しNTG暴露を行いX線を照射しても,細胞周期には特に明らかな変化はみられなかった.通常酸素条件では活性分子であるNOはHIF-1alpha;を安定化することが報告されているので, NTGは活性分子種であるNOを介して培養細胞に影響を与える可能性が示唆された. 活性分子種が放射線照射との併用で細胞に与える作用をさらに検討するため,まず活性酸素の腫瘍細胞に与える影響を解析した.慢性白血病細胞株K562培養細胞に活性酸素を誘発するPMAを投与しX線6Gyを照射したところ,細胞内の活性酸素量が増強し,巨核球系への分化誘導が促進された.活性酸素の巨核球分化誘導への関与を検討するため,活性酸素の捕捉剤であるN-アセチルシステインを投与し,同様の実験を行ったところ,NACの投与により巨核球分化が抑制された.以上よりX線照射による活性酸素の産生増強が細胞内活性分子種と相加的に細胞分化に影響を与えると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養細胞にNTGを投与し,コロニー形成法により放射線増感作用を検討し結果を得た.培養細胞にNTGを投与し,経時的に細胞を回収し,ウェスタンブロット法を用いHIFやDNA修復・細胞周期関連タンパク質の発現を解析し結果を得た.NTG投与後にX線を照射し,DNA修復・細胞周期関連タンパク質発現の変化を解析し結果を得た.低酸素下で培養した細胞にNTGを投与し,コロニー形成法を用いて放射線増感作用を検討し,現在解析途中である.低酸素下で培養した細胞にNTGを投与し,経時的に細胞を回収し,ウェスタンブロット法を用いてHIFやDNA修復・細胞周期関連タンパク質,iNOSの発現について解析し現在解析途中である.NTG投与後にX線を照射し,DNA修復・細胞周期関連タンパク質発現の変化を解析し現在解析途中である.NTGの作用発現機序に関連して,NO捕捉剤c-PTIOや,NOの標的タンパク質の阻害剤などを投与し,作用の減弱や増強の有無を検討する予定であるが未着手である. NTG・他NO供与体の腫瘍組織血流への影響と放射線増感の検討として,A549細胞をヌードマウスに移植し,腫瘍血流の改善作用と腫瘍組織低酸素細胞分画の減少,放射線増感作用について検討を加える予定であるが未着手である. 上記に関連して,活性分子種が放射線照射との併用で細胞に与える影響を評価する必要があったため,新たな課題として追加し実行した.活性酸素の腫瘍細胞に与える影響を解析した.慢性白血病細胞株K562培養細胞では,X線照射によって細胞内の活性酸素量が増強し,巨核球系への分化誘導が促進された.X線照射による活性酸素の産生増強が細胞内活性分子種と相加的に細胞分化に影響を与えると考えられた.以上を論文にまとめ,Journal of Radiation Researchに2報報告した.
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今後の研究の推進方策 |
慢性低酸素条件下にて,低酸素下で培養した細胞にNTGを投与し,X線を照射する.コロニー形成法を用いて放射線増感作用を検討する.低酸素下で培養した細胞にNTGを投与し,経時的に細胞を回収し,ウェスタンブロット法を用いてHIFやDNA修復・細胞周期関連タンパク質,iNOSの発現を解析する.NTG投与後にX線を照射し,DNA修復・細胞周期関連タンパク質発現の変化を解析する.NTGの作用発現機序に関連して,NO捕捉剤c-PTIOと,NOの標的タンパク質の阻害剤などを投与し,作用の減弱や増強の有無を検討する. A549細胞をヌードマウスに移植し,腫瘍血流の改善作用と腫瘍組織低酸素細胞分画の減少,放射線増感作用について検討を加える.培養細胞を移植したヌードマウスを用い,生育させた腫瘍を摘出し組織切片を作成,免疫組織化学法を用いて細胞内HIFの局在を解析する.腫瘍が十分生育したマウスにNTGおよびISDNを静脈投与する.投与前後での腫瘍組織血流の変化量をレーザードップラー測定にて解析する.NTGおよびISDN全身投与後に腫瘍にX線を照射し,Tumor doubling timeを測定し放射線増感作用を解析する.腫瘍を摘出し組織切片を作製,HIFを指標に組織酸素化の改善について検討する.ヌードマウスを用いて,肺照射による放射線肺障害の発症リスクについて検討を加える.NTGおよびISDN投与下で片側の正常肺組織へX線を照射し,観察後に肺組織を摘出,組織切片とし,肺線維化マーカーでの免疫染色を用いて肺障害を定量化し,各薬剤での放射線肺障害のリスク評価を行う. Perfusion CTを利用した,NTGによる腫瘍組織血流改善の評価と放射線増感作用の相関性;まずマウスでPerfusion CTを利用した実験系を構築できるかを検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
培養細胞実験やマウス実験で用いる,シャーレ,ピペット,培地,血清,試薬,抗体などの消耗品を購入する.あらたに低酸素チャンバーが必要であるため購入する.腫瘍組織血流を測定するため,レーザードップラー血流計のプローブを購入する.公表可能な結果について国内外で発表を行うため,旅費として使用する.
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