当初予定した全身照射を施行したマウス5匹は全例で早期死亡あるいは急激な体重減少を認めたためその時点で安楽死をさせた。これは放射線食道炎および骨髄抑制による感染が原因と思われた。 そこで、次に下半身を鉛でブロックし、半身照射8Gyをマウス10匹に施行した。照射後2週間にて1群(5匹)に心房型ナトリウム利尿ペプチドの静脈投与を行った。その後に半年間の経過観察後に、心電図および呼吸同期させた心臓MRIを施行し、心筋の信号変化を測定した。即座に安楽死させ心臓摘出し心臓組織検索を行った。マッソン・トリクローム染色など組織の線維化と形態変化を中心に観察を行った。 対照群は非照射群(10匹:このうち5匹はナトリウム利尿ペプチド投与)とした。半年間の経過観察中に非照射群で3匹が、照射群で5匹が死亡した。照射群で有意に体重増加の不良を認めた。これもやはり放射線食道炎と骨成長障害によるものと考察した。組織学的に照射群で心外膜の肥厚および心筋の線維化を認めたが、ナトリウム利尿ペプチド投与群と非投与群の間に線維化の程度などに有意な差は認めなかった。このことから心房型ナトリウム利尿ペプチドには、放射線による心筋線維化の抑制効果・予防効果は認められないと判断した。 今後は本邦では薬事承認されていない脳性ナトリウム利尿ペプチドやACE inhibitorによる同様の実験を行い、放射線心筋障害予防効果について検討する方針である。
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