研究課題/領域番号 |
24791270
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川住 祐介 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00513540)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 死亡時画像診断 / CT / 溺水 |
研究概要 |
当施設で死後CT検査および法医学解剖が行われた症例から、高度な腐敗や診断困難な症例を除外し、最終的に溺水症例を39例、非溺水症例を112例選出し検討を行った。副鼻腔の液貯留、気管・気管支の液貯留、胸水貯留、肺野濃度上昇という4つの所見は、溺水症例に統計学的有意に多く認められた。しかしながら非溺水症例にも多く認められ、感度や特異度といった診断能は低かった。そのため溺水診断は、これらの所見の存在だけでは不十分であると考えられた。ここまでの結果を副鼻腔の液貯留(上顎洞および蝶形骨洞)に的を絞ってまとめたものが、査読を経てEuropen Jounal of Radiologyに掲載された。 次に、前述の症例のうち副鼻腔に液貯留のある症例だけを選び、溺水と非溺水の間で貯留液の体積や濃度の違いがあるかどうかを検討した。溺水症例は38例、非溺水症例は73例となった。体積は溺水症例の方が統計学的有意に大きく(p=0.0004)、濃度は非溺水症例の方が統計学的有意に高かった(p=0.0006)。ROC解析を行ったところ、37.8HUという濃度をカットオフ値にすると、溺水診断の感度が84%と最も高くなる結果となり、溺水診断に有用な所見であると考えられる。この結果は現在論文執筆中である。 肺のvolumeおよび平均CT値測定による肺重量推定に関しては、肺野は様々な死後変化が生じやすく、臨床と同様の方法では測定が困難で、現在難航中である。 体内貯留液と遺体発見現場(海、川、風呂など)との相関性に関しては、上記で副鼻腔(上顎洞と蝶形骨洞)に的を絞ってすでに濃度が測定されているので、現在統計学的に解析中である。症例数が少ない場合は、適宜新たな症例を選び濃度を測定し追加していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.副鼻腔の液貯留、気管・気管支の液貯留、胸水貯留、肺野濃度上昇と言った所見は、溺水で統計学的有意に多く認められることが示されたが、感度や特異度といった診断能は高くなく、その存在だけで溺水を診断することは困難であることがわかった。一番液貯留の頻度が高い上顎洞および蝶形骨洞に的を絞り濃度を測定たところ、溺水と非溺水で統計学的有意差があることが示された。 2.肺野には死後変化が生じやすく、肺のvolumeを測定することが困難であることがわかり、肺重量の推定に関しては現在難航中である。 3.遺体発見現場の液体と体内貯留液体濃度の相関性は、現在解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
肺のvolumeおよび平均CT値測定による肺重量推定に関しては、肺野は様々な死後変化が生じやすく、臨床と同様の方法では測定が困難で、現在難航中である。異なる方法での肺重量推定法も模索していく。 体内貯留液と遺体発見現場(海、川、風呂など)との相関性に関しては、すでに副鼻腔(上顎洞と蝶形骨洞)に的を絞って濃度が測定されているので、統計学的解析を進める。症例数が少ない場合は、適宜新たな症例を選び濃度を測定し追加していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことと、家庭の事情により学会などへの参加が困難であったこととに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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