研究課題/領域番号 |
24791271
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
住吉 晃 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (80612530)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 神経科学 / MRI / パーキンソン病 / 栄養因子 / ラット |
研究概要 |
申請者のグループは、世界に先駆けてラット脳専用のin vivo MRIテンプレートを開発した。これにより、脳アトラスへの標準化、灰白質・白質への自動帰属など、これまでヒトのMRI研究で広く行われてきた統計解析が、ラットの脳を対象に行う事が可能となった。本研究では、我々の新規手法を用いて、パーキンソン病モデル動物の病態発症以前の連続的な脳委縮の過程を明らかにし、神経栄養因子(BDNF、CDNF、MANF)の頭蓋内・静脈内投与による脳保護治療を試みる事を目的とする。研究の初年度では、パーキンソン病のラット病態モデルの研究室への導入を試みた。申請者の所属する研究分野では、研究室専用の飼育室を保有しており、慢性MRI実験の許可も得られているため、モデル作製のための化学薬品が揃えば、本研究を直ちに開始することが可能である。しかし、モデル作製に使用するロテノンはミトコンドリアの機能を傷害する殺虫剤として用いられてきた経緯があり、ラットに投与する場合は、行動解析や組織染色を用いて、慎重に毒性を評価する必要がある。また、パーキンソン病の病態モデル動物として使用するためには、α-シヌクレインやユビキチン等の封入体形成の確認が必要であり、ラットの遺伝的背景や飼育環境も含めて、多次元的に検討する必要がある。またMRI測定では、少なくとも30分から1時間の麻酔時間が必要であるため、48時間周期でのMRI測定に耐えうるようなMRI実験環境の構築も必要である。初年度は上記の検討課題を中心に取り組み、研究の基盤環境を整える事を目標とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、再現性の高いロテノンの腹腔内注射モデルを使用した(Cannon et al., Neurobiol Dis, 2009)。このモデルでは、チロシン水酸化酵素の脱落に加え、α-シヌクレインやユビキチンの封入体が、黒質のドパミン性神経細胞で確認されている。更に古典的な運動機能の障害が、投薬後10日間の間に誘発される事が報告されている。しかし、腹腔内注射の際のニードル位置や、ロテノンの溶解性、MRI実験に耐え得るような投与量の検討など、種々の検討課題が想定されるため、初年度はロテノンモデルの研究室内への導入を試みた。9ヶ月齢の雄のLewisラット、Wistarラット、Sprague-Dawleyラット、それぞれ2匹ずつに対して、3.0mg/kg/dayの投与量で、ロテノンを腹腔内注射した。その結果、文献に報告されているように、ロテノンを腹腔内投与すると、投与後7日目もしくは8日目に、顕著な体重変化に加えて、動作緩慢、姿勢不安定、歩行不安定などの、いわゆるパーキンソン様症状が観察された。さらにこれらの症状が観察されるまでの投与後7日目もしくは8日目以内では、イソフルレン麻酔下のMRIの撮像には(約30分ほど)、全く影響がない事が確認された。したがって、これらの結果から、ロテノンモデルの当研究室での再現に成功し、MRI実験に耐えうるような、パーキンソン病モデル動物の確立に成功したと結論付けた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に検討した課題を踏まえて、実際のMRI計測を開始する。MRI計測は、運動障害が現れるまでの約8日間にかけて、48時間周期で行う(Day0、Day2、Day4、Day6、Day8)。実験日は、午前中にMRI計測(約30分のT2強調画像撮像)、午後に行動解析(動作緩慢・姿勢不安定・硬直の検査)を行う。MRI計測は研究代表者が行い、行動解析は実験補助員が行う。MRIを行う実験者と、行動解析を行う実験者を分けることで、盲目(ブラインド)の効果をもたせる狙いがある。Voxel-based morphometryによる画像の統計解析では、病態群とコントロール群(Vehicle群)に分けて、2標本t検定による解析を行う(p < 0.05, FWE-corrected)。統計的に有意な結果が得られるサンプル数まで計測を重ねるが、ラットの匹数は病態群とコントロール群で、それぞれ15匹程度を見込んでいる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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