研究課題/領域番号 |
24791271
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
住吉 晃 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (80612530)
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キーワード | 神経科学 / MRI / パーキンソン病 / 栄養因子 / ラット |
研究概要 |
申請者のグループは、世界に先駆けてラット脳専用のin vivo MRIテンプレートを開発した。これにより、脳アトラスへの標準化、灰白質・白質への自動帰属など、これまでヒトのMRI研究で広く行われてきた統計解析が、ラットの脳を対象に行う事が可能となった。本研究では、我々の新規手法を用いて、パーキンソン病モデル動物の病態発症以前の連続的な脳委縮の過程を明らかにし、神経栄養因子(BDNF、CDNF、MANF)の頭蓋内・静脈内投与による脳保護治療の開発を試みる事を目的とする。パーキンソン病の動物病態モデルを用いて脳形態解析を行った報告例は存在せず、MRI による連続した脳形態変化が明らかになれば、新たな実験切り口での臨床前評価の基盤技術を提供できる可能性がある。本研究では、再現性の高いパーキンソン病モデルである腹腔内ロテノン投与ラットモデルを使用した。このモデルでは、チロシン水酸化酵素の脱落に加え、α-シヌクレインやユビキチンの封入体が、黒質のドパミン性神経細胞で確認されている。更に古典的な運動機能の障害が、投薬後10日間の間に誘発される事が報告されている。しかし、ロテノンはミトコンドリアの機能を傷害する殺虫剤として用いられてきた経緯があり、ラットに直接投与する場合は、行動解析や組織染色を用いて、慎重に毒性を評価する必要がある。また、腹腔内注射の際のニードル位置や、ロテノンの溶解性、MRI実験に耐え得るような投与量の検討などの個別課題が想定される。したがって、初年度(平成24年度)は、ロテノンモデルの研究室内への導入を試み、当該年度である平成25年度は、前年度に検討した課題を踏まえて、実際のラットMRI計測実験を開始・実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MRI計測は、ロテノン投与前(MRI撮像1回目)、ロテノン投与後1週間(MRI撮像2回目)、ロテノン投与後2週間(MRI撮像3回目)の計3回を行った。これまでに、コントロール群(ラット10匹)とパーキンソン病モデル群(ラット10匹)、それぞれのMRI撮像が完了している。実験日は、午前中に体重測定、行動解析(立ち上がり検査、ならびに動作緩慢・姿勢不安定・硬直の検査)、午後にMRI計測(約40分のT2強調画像撮像)を行った。MRIの撮像後は、死後脳の免疫組織染色解析を行うため、4%パラホルムアルデヒドによる脳の灌流固定を行った。取得したMRIデータ、ならびに行動データは、現在解析中である。縦断的なMRIデータに基づき、行動データとの相関解析や、組織染色データとの相関解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成26年度は、前年度に得られた結果を踏まえて、脳の萎縮が観測された領域に、3種の神経栄養因子(BDNF、CDNF、MANF)の部位特異的な頭蓋内注入(もしくは全身性の静脈注入)を施し、病態群と治療群での比較MRI実験と比較行動解析実験を行う。実験のスケジュールやラットの匹数等の基準は、前年度の場合と同様である。また、最終年度の後半は、論文執筆・投稿・訂正の期間とし、本研究の成果を統括し、社会や国民に広く周知する活動を行う。
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