本研究は、強度変調放射線治療の強度分布を真に逆問題として解くための新しい手法の開発を目的とする。粒子輸送を記述する基本方程式であるボルツマン方程式に基づいて真の最適解を求められる可能性があるという着想に基づく。 平成24年度は、基礎方程式に基づく線量計算の正確性を担保するため、まず、計算手法の確立しているモンテカルロ法により、正方形照射野、直方体ファントム等基本的な照射野のもとで高精度線量計算の土台を固めた。計画当初はボルツマン方程式に基づく最適化を考えていたが、研究を進める中で、その方針ではごく簡単な場合においても計算時間が膨大となるとの認識に至った。また、臨床状況と同等の照射条件で線量計算を行うには、治療装置から照射されるX線スペクトラムを再現すること、及び、DICOMファイルから照射条件など線量計算に必要なパラメータを自動で読み出すシステムを構築することが不可欠であるという認識に至った。そこで、平成25年度では当初の予定を変更し、計算精度が下がるが高速に計算できるスーパーポジション法、ペンシルビームコンボルーション法をワークステーション上でコーディングすることを目指し、その計算速度、精度の検討を行った。平成26年度では、治療装置から照射されるX線スペクトラムの最適化手法の検討を行うとともに、DICOMファイル形式を自動で読み込み、治療計画通りの照射条件を自動で設定するようなシステムの構築を行った。このDICOMファイル解析システムの応用として、肺がんの線量分布に対し商用線量アルゴリズムの線量分布評価を行い報告した。 本研究の当初の目的である強度変調放射線治療の線量計算最適化に関しては、以上で基礎が構築されたインハウスの線量計算システムに基づき引き続き研究を進め成果を報告する予定である。
|