研究課題
悪性脳腫瘍は高い増殖性と遊走性という特徴を持っており、脳内を浸潤性に広がるため治療が困難である。放射線照射に伴う”遊走・浸潤”による機序や、これを抑止し阻害するための方策の手掛かりを解明することは、脳腫瘍における今後の放射線治療の向上にとって重要な課題である。本研究はX線および炭素イオン線照射による悪性脳腫瘍細胞の走行性(遊走・浸潤能)の影響について定性的かつ定量的に評価することを目的とした実験である。これまでに、照射後の細胞の遊走能についてwound-healing assayにより評価した結果、X線および炭素イオン線の単回照射は神経膠芽腫細胞の遊走能を線量依存的に亢進することを明らかにした。また、照射した細胞を24時間培養した後に各線量ごとに培地を回収し、その培地を用いて非照射細胞を培養した結果、非照射細胞の遊走能は照射線量に依存して亢進し、その遊走能の亢進には、照射した細胞から放出されたグルタミン酸が関与していること、O6-メチルグアニンDNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)遺伝子の発現が関与していることを示唆する結果を得ている。これらの結果を踏まえて、今年度は走行性に関与する分子メカニズムの詳細な解析と遊走能の亢進における炭素イオン線のLET依存性および分割照射効果について詳細な評価を行う予定であったが、妊娠・出産により2014年1月まで実験を遂行することができなかったため、当該年度はこれまでのデータのまとめを中心に行った。
3: やや遅れている
妊娠・出産、育児により予定していた実験を実施することができなかったため
本学で実施している女性研究者研究活動支援事業を積極的に活用し研究と育児の両立を図る。研究内容については、神経膠芽腫細胞における走行性に関する線質効果および分割効果について早急に解析を進める。また、これまでに結果として得た走行性に関与する分子に着目し、メカニズムの詳細な解析を推し進める。これらの成果について速やかに英語論文化して国際誌に研究成果を報告するとともに、国内外の医学・生物学領域の学会での発表を積極的に行う。
妊娠・出産による産前産後休暇、その後、育児休暇を取得したため未使用額が生じた。H25年度で予定していた実験と学会・研究会での発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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J Radiat Res
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Radiat Res.
巻: 179 ページ: 630-636
10.1667/RR3098.1.