研究課題
悪性脳腫瘍は高い増殖性と遊走性という特徴を持っており、脳内を浸潤性に広がるため治療が困難である。放射線照射に伴う”遊走・浸潤”による機序や、これを抑止し阻害するための方策の手掛かりを解明することは、脳腫瘍における今後の放射線治療の向上にとって重要な課題である。本研究はX線および炭素イオン線照射による悪性脳腫瘍細胞の走行性(遊走・浸潤能)の影響について定性的かつ定量的に評価することを目的として実験を行った。O6-メチルグアニンDNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)遺伝子発現の異なるヒト神経膠芽腫細胞株4種を用いてX線または炭素イオン線を照射し、継時的にサンプルを回収して増殖および遊走能について解析した。照射後の細胞の遊走能についてwound-healing assayにより評価した結果、X線および炭素イオン線の単回照射は一部の神経膠芽腫細胞の遊走能を線量依存的に亢進することを明らかにした。その遊走能の亢進には照射した細胞から放出されたグルタミン酸が関与しており、αーアミノ-3-ヒドロキシ-5-メソオキサゾール-4-プロピオン酸(AMPA)型グルタミン酸受容体拮抗薬を照射時に併用することで遊走能の亢進は抑制されることを明らかにした。以上の結果から、AMPA型グルタミン酸受容体拮抗薬は放射線治療において有用な遊走阻害剤となる可能性が示唆された。また、グルタミン酸を介した遊走能の亢進にはN-,E-cadherinが関与していること、MGMT遺伝子の発現が関与していることが示唆された。
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