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2012 年度 実施状況報告書

放射線照射による白金製剤内包高分子ミセルの腫瘍集積性の変化

研究課題

研究課題/領域番号 24791278
研究機関東京大学

研究代表者

水野 和恵  東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (80615972)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワードドラッグデリバリーシステム / がん治療 / 化学放射線療法
研究概要

本研究の目的は、放射線照射後の腫瘍組織の経時的な変化と、それが白金製剤含有高分子ミセルの集積性に与える影響を明らかにし、化学放射線療法への応用に向けて、最も治療効果の高い併用方法を考案することである。平成24年度に実施した実験は以下の通りである。
マウス(Balb/c nu/nu, メス, 5週)の大腿部に、SAS(ヒト頭頚部癌細胞)を皮下移植し、腫瘍部以外を鉛板で遮蔽しながら、麻酔下でX線(200kV, 1.3Gy/min)4, 8, 12, 16Gyを1回照射した。照射してから0, 1, 2, 3週間後に、蛍光標識したダッハプラチンミセルを投与し、24時間後に腫瘍切片を作成して、αSMAとPDGFRβの染色により線維化の状態を調べると共に、蛍光ミセルの分布を評価した。その結果、0, 4, 8Gyでは3週間後に腫瘍内の線維化マーカーのスコアが上昇したが、12, 16Gyでは減少した。0, 4, 8Gyでは線量が上がるにつれてミセルの蛍光強度が減少しており、線維化とミセルの集積性との関連性が示唆された。
放射線感受性は細胞周期に大きく依存する為、細胞周期によって蛍光色が異なるHeLa-fucci細胞を用い、シスプラチンとシスプラチンミセル投与後の細胞周期停止の様子をin vivo共焦点レーザー顕微鏡により観察した。試薬投与から0, 24, 48, 72, 96時間後の腫瘍の蛍光画像を取得した。シスプラチンミセルの方が血中滞留性が長い為、細胞周期停止の状態が長く観察されることが予想されたが、細胞周期停止状態にある細胞の割合のピークは、シスプラチンと同じ投与48時間後であった。
初年度の実験結果から、X線照射後の腫瘍の線維化はミセルの集積性を低下させる可能性があること、及びシスプラチンミセルの細胞周期への影響は従来のシスプラチンと同等である可能性が示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

癌細胞株をヒト肺癌・膵臓癌細胞から、化学放射線療法への早期の応用が期待される頭頚部癌へと変更した。まず実験条件の設定を行った為、当初予定よりも時間がかかった。放射線照射後の腫瘍における高分子ミセルの集積性の評価は、研究代表者の妊娠・出産により、放射光蛍光X線分析を延期し、代替方法として蛍光標識した高分子ミセルの評価を行った。評価の方法として定量性に劣るが、予定通り進展している。in vivo共焦点レーザー顕微鏡による蛍光標識したミセルの腫瘍内血管の透過性および短期的な腫瘍集積性の評価は、条件の検討を優先する為、次年度に延期した。放射線照射後の腫瘍の病理解析、およびin vivo共焦点レーザー顕微鏡によるシスプラチンミセル投与後の細胞周期停止の観察は予定通り進展しているが、N=1で行った為、追試が必要である。

今後の研究の推進方策

後の推進方策として、線維化や血管の閉塞といった放射線照射後の腫瘍の微小環境と、白金製剤含有高分子ミセルの腫瘍内分布とがどのように関連しているかを、病理解析とin vivo共焦点レーザー顕微鏡を主として明らかにする。具体的には、ヌードマウスに皮下腫瘍を作成し、異なる線量のX線を照射して一定時間の後、蛍光標識した白金製剤含有高分子ミセルを投与する。腫瘍内の白金および蛍光の微細な分布をマイクロ放射光蛍光X線分析もしくは蛍光顕微鏡により定量的に評価する。同時に線維化マーカーや血管の染色により、微小環境の病理解析を行う。得られた結果を元に、白金製剤含有高分子ミセルと放射線を併用する治療の問題点を明らかにし、最適な治療スケジュールや併用方法を提案する。

次年度の研究費の使用計画

物品費として、動物実験に使用する免疫不全マウスと、蛍光標識した高分子ミセルを作成する為の試薬、その他動物・細胞実験に必要な消耗品、専門書を購入予定である。また、病理解析に必要な試薬に加え、解析の外注費用が発生する見込みである。
その他として、学会発表、情報収集、SPring8での放射光蛍光X線分析の為の旅費、論文発表の為の英文校正費と投稿料に使用する。

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公開日: 2014-07-24  

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