研究概要 |
本研究の目的は、放射線照射後の腫瘍組織の経時的な変化と、それが白金製剤含有高分子ミセルの集積性に与える影響を明らかにし、化学放射線療法への応用に向けて、最も治療効果の高い併用方法を考案することである。平成24年度に実施した実験は以下の通りである。 マウス(Balb/c nu/nu, メス, 5週)の大腿部に、SAS(ヒト頭頚部癌細胞)を皮下移植し、腫瘍部以外を鉛板で遮蔽しながら、麻酔下でX線(200kV, 1.3Gy/min)4, 8, 12, 16Gyを1回照射した。照射してから0, 1, 2, 3週間後に、蛍光標識したダッハプラチンミセルを投与し、24時間後に腫瘍切片を作成して、αSMAとPDGFRβの染色により線維化の状態を調べると共に、蛍光ミセルの分布を評価した。その結果、0, 4, 8Gyでは3週間後に腫瘍内の線維化マーカーのスコアが上昇したが、12, 16Gyでは減少した。0, 4, 8Gyでは線量が上がるにつれてミセルの蛍光強度が減少しており、線維化とミセルの集積性との関連性が示唆された。 放射線感受性は細胞周期に大きく依存する為、細胞周期によって蛍光色が異なるHeLa-fucci細胞を用い、シスプラチンとシスプラチンミセル投与後の細胞周期停止の様子をin vivo共焦点レーザー顕微鏡により観察した。試薬投与から0, 24, 48, 72, 96時間後の腫瘍の蛍光画像を取得した。シスプラチンミセルの方が血中滞留性が長い為、細胞周期停止の状態が長く観察されることが予想されたが、細胞周期停止状態にある細胞の割合のピークは、シスプラチンと同じ投与48時間後であった。 初年度の実験結果から、X線照射後の腫瘍の線維化はミセルの集積性を低下させる可能性があること、及びシスプラチンミセルの細胞周期への影響は従来のシスプラチンと同等である可能性が示された。
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