研究課題
肝細胞癌はGd-EOB-DTPA造影MRI肝細胞相で通常低信号を呈するが、10-15%の頻度で高信号を呈する病変が存在する。このような信号強度の差は異なる分子病理学的背景を有するsubtypeを反映している可能性があると考え、切除例を対象として低信号群と高信号群との比較検討を行った。平成24年度の検討により組織学的な特徴として高信号群では分化度が高く、門脈浸潤の頻度が低いという結果が得られた。血清腫瘍マーカーは高信号群で有意に低値を示した。切除標本の各種マーカーの発現は高信号群でOATP8、HepPar-1、β-catenin、glutamine synthetaseの発現が有意に増加していたが、AFP、PIVKA-II、EpCAM、Glypican-3の発現は有意に低下していた。平成25年度での予後評価では低信号群と比較して高信号群では術後の再発率が有意に低く、生存率も高い傾向が認められた。画像による検討では高信号群では低信号群と比較して、単純CTで高吸収、MRI T1強調像で高信号、T2強調像で低信号を呈し、拡散能が高い傾向が認められた。さらに画像経過による発癌様式の検討にて、高信号肝癌は低信号の前癌病変から発生する頻度が高く、多段階発癌の過程で出現することが明らかになった。以上の結果より、高信号肝細胞癌すなわちOATP8陽性肝細胞癌は、多段階発癌の過程で発生し特徴的な画像所見を示すこと、悪性度が低く予後良好な一群であることが推測された。さらにマーカー発現のパターンより、stem cell由来というよりも成熟肝細胞に近い性質を有するsubtypeである可能性が示唆された。このように画像による肝細胞癌のsubtypeの推測が可能となれば、組織の採取を必要とせずに悪性度や予後の推測、適切な治療法の選択につながる可能性があり、今後の個別化診療においても重要であると考えられる。
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Hepatology
巻: Epub ahead of print ページ: in press
10.1002/hep.27093.
Jpn J Radiol
巻: 31 ページ: 480-490
10.1007/s11604-013-0224-6.